ウッドストックが開催された1969年の夏、100マイル(160キロ)離れた場所(ニューヨーク市マンハッタンのハーレム地区マウント・モリス公園)で、別の音楽フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」が開催された。
入場券は無料。
警備(のメイン)はブラック・パンサー党。
30万人を超える観客を動員したこの黒人フェスティバルの映像フィルムは50年間地下に眠り、日の目を見ることはなかった。
初監督のアミール・“クエストラブ”・トンプソンが、フェスティバルの映像フィルムに、当時の社会映像、観客やアーティストなど関係者などのインタビュー、証言などを交えながら、フェスの全貌を描き出したドキュメンタリー。
原題／Summer of Soul (...Or, When the Revolution Could Not Be Televised) (2021)
～演奏曲と参加ミュージシャン、(映像に関する多少のコメント)～
・ 01.Drum Solo / It’s Your Thing – Stevie Wonder スティーヴィー・ワンダー
(1968年は黒人の意識革命の年。時代背景→63年ケネディ、65年マルコスX、68年キング牧師、68年ロバート・ケネディの暗殺、ベトナム戦争。前線の戦士の割合は黒人の方が多い。黒人暴動の多発)
・02. Uptown アップタウン– Chambers Brothersチェンバース・ブラザース
・03. Why I Sing The Blues ホワイ・アイ・シング・ザ・ブルース– B.B. King B.B.キング
(-- Knock On Wood – Tony Lawrence and The Harlem Cultural Festival Band)
・04. Chain Of Fools チェイン・オブ・フールズ– Herbie Man ftg. Roy Ayersハービー・マン
(-- Give A Damn – Staples Singers)
(コンサートの立役者であるプロデューサー兼司会のトニー・ローレンス。開催に理解を示した共和党リベラル派のジョン・リンゼイニューヨーク市長)
・05. Don’tcha Hear Me Callin’ To Ya 僕の声聞こえるかい– Fifth Dimensionフィフス・ディメンション
・06. Aquarius / Let The Sunshine In 輝く星座/レッツザ・サンシャイン・イン – Fifth Dimensionフィフス・ディメンション
(白人ぽいと言われた彼ら(マリリン・マックーと男性メンバー)が黒人だけの中で歌う意味。曲との出会い:タクシーで失くした財布を拾って届けてくれたのが次に乗った"ヘアー"のプロデューサーだった。「音と肌の色は関係ない」)
・07. Oh Happy Dayオー・ハッピー・デイ – Edwin Hawkins Singers ftg Dorothy Morrisonエドウィン・ホーキンス・シンガーズ
(「オー・ハッピー・デイを教会は認めなかった」)
・08. Help Me Jesusヘルプ・ミー・ジーザス– Staple Singersステイプル・シンガーズ
09. Heaven Is Mineヘブン・イズ・マイン – Prof. Herman Stevens & The Voice Of Faith Prof.ハーマン・スティーブンス&ボイス・オブ・フェイス
・10. Wrapped, Tied & Tangled – Clara Walker & The Gospel Redeemersクララ・ウォーカー&ザ・ゴスペル・リディーマーズ
・11. Lord Search My Heart – Mahalia Jackson & Ben Branchマヘリア・ジャクソン&ベン・ブランチ
(-- Let Us Break Bread Together – Operation Breadbasket)
・12. Precious Lord, Take My Hand –Mahalia Jackson & Mavis Staples–マヘリア・ジャクソン&メイヴィス・ステイプルズ
(体調が良くないマヘリア、二人による渾身のデュエット)
・13. My Girl マイ・ガール– David Ruffinデイヴィド・ラフィン
・14. I Heard It Through The Grapevine悲しいうわさ – Gladys Knight & The Pipsグラディス・ナイト&ザ・ピップス
(「モータウンは私たちに行儀よくしててほしかったの。でも…」)
・15. Sing A Simple Song シング・ア・シンプル・ソング– Sly & The Family Stoneスライ&ザ・ファミリーストーン
・16. Everyday Peopleエヴリデイ・ピープル – Sly & The Family Stoneスライ&ザ・ファミリーストーン(グループの中に白人と女の子がいた彼らのファッションとオリジナリティ)
・17. Watermelon Man ウォーターメロン・マン– Mongo Santamariaモンゴ・サンタマリア
・18. Abidjanアビジャン – Ray Barrettoレイ・バレット
(-- Afro Blue – Mongo Santamaria)
・19. Togetherトゥゲザー – Ray Barrettoレイ・バレット
・20. It’s Been A Change イッツ・ビー・ア・チェンジ– Staple Singersステイプル・シンガーズ
・21. Shoo-Be-Doo-Be-Doo-Da-Dayシュ・ビ・ドゥ・ビ・ドゥ・ダ・ディ – Stevie Wonderスティーヴィー・ワンダー
・22. Ogun Ogun – Dinizulu & His African Dancers & Drummersディニズル&ヒズ・アフリカン・ダンサーズ&ドラマーズ
(-- Cloud Nine – Mongo Santamaria)
・23. Hold On, I’m Comingホールド・オン, アイム・カミング – Herbie Mann & Sunny Sharrock ハービー・マン&ソニー・シャーロック
・24. It’s Time イッツ・タイム– Max Roachマックス・ローチ
・25. Africaアフリカ– Abbey Lincoln & Max Roach アビー・リンカーン&マックス・ローチ
・26. Helese Ledi Khanna – Hugh Masekelaヒュー・マセケラ
・27. Grazing In The Grass草原の太陽 – Hugh Masekelaヒュー・マセケラ
・28. Backlash Blues バックラッシュ・ブルース– Nina Simoneニーナ・シモン
・29. To Be Young, Gifted & Black – Nina Simoneニーナ・シモン
(1961年同級生のハミルトン・ホームズとともに黒人で初めてジョージア大学に入学したシャーレイン・ハンターゴールドのコメント…寮での嫌がらせに対し支えとなったニーナの曲、
"ニグロ"から"ブラック"へ)
・30. Are You Ready? – Nina Simoneニーナ・シモン
(準備はいい？ディヴィッド・ネルソンの詩を読みアジる。「黒人の歴史の一部が消しとられようとしている」「必要なら殺す覚悟はある？」)
・31. Higher ハイヤー– Sly & The Family Stoneスライ&ザ・ファミリーストーン
・Ending credit roll : Have A Little Faithハブ・ア・リトル・フェイス – Chambers Brothersチェンバース・ブラザース
ウッド・ストックは伝説となったが、このコンサートは存在自体が初耳。
黒人コンサートというだけで、歴史から抹殺されてしまった貴重なフィルムと、貴重なインタビュー。万人に見て欲しい(物事は一方向から見ても分からない)。
なお、映画が終わったと思ったら、スティヴィー・ワンダーと白人とのあるやり取りが写される。わざわざ入れなくてもよかったと思ったのだが、この点は議論があるところだろう。
