mmm

かそけきサンカヨウのmmmのレビュー・感想・評価

かそけきサンカヨウ(2021年製作の映画)
4.1
幼い頃に母親と離別した陽(志田彩良)
心のどこかで、母のことが気にかかりつつも、父の直(井浦新)と2人暮らしをしていました。
友達と放課後に遊んでいても、時間になると帰宅し晩御飯の支度をするのも手慣れた様子。
そんな穏やかな日が続いていたある日、父親から再婚を告げられ、唐突に2人暮らしは終わりを迎えるのでした。
突然始まった再婚相手の美子(菊池亜希子)と連れ子のひなたと4人の生活
戸惑いを抱えつつ、同級生の陸(鈴鹿央士)と事実を伏せたまま生みの母で画家の佐千代(石田ひかり)の個展に誘います。

--------------------------

原作は窪美澄氏の「水やりはいつも深夜だけど」の中に収録されている短編
原作未読の状態で鑑賞したため、原作とのバランスは分からないのですが、
ところどころに今泉イズムを感じ(失礼だったらすみません)
とてもとても優しい時間に満ちていました。

今泉監督といえば、2019年の「愛がなんだ」で一気に知名度があがり、その後も注目をされ続け恋愛映画の名手と呼ばれることもあるそうですが、
個人的には、“情熱的な愛”というより誰かを想う純粋な気持ちの表現に長けているのではないかと思ってます。

そして、勝手ながら思う優しさの成分のひとつは眼差し
スクリーンに映し出される光景が親が子を見守っているかのような気が終始してました。
あれは、直の目線なのか、監督の目線なのか…

本作は「愛がなんだ」のスタッフさんが再集結しているそう。
(今のところ)原作があるものは自分だけで脚本はしないと話されていたことがあり
今回も澤井香織さん(クレジットだと連名だったかな…)が担当されてましたが、とても良いバランスだなぁと思いました。


淡い恋のお話も入っていますが、どちらかというと家族との関係性が中心
離れてしまった実の母親、ずっと暮らしてきた父親、新しく家族になった母と妹
15~16歳の女の子にとって(いやいや年齢関わらず)それを受け入れることは簡単なことではないはず。

葛藤を内に秘める陽の健気な姿を演じる志田さんがとても瑞々しくて可愛かったなぁ。
陸を演じる鈴鹿さんのピュアで繊細さな感じ(あの涙は本当に出たんじゃないかな)もピタリとはまっていた。

美子さんやひなたちゃん、陸の母や祖母、誇張はされていないけど、どちらかというと女性にフォーカスがいくような作品かなぁと感じました。

それぞれがおかれた状況と、人と人とが話す中で気付いてくことや解れていく関係性が丁寧に描かれてます。

お父さんは、どちらかというと見守るタイプですが、井浦さんの雰囲気が本当に穏やかで。
そんな中で、陽と向き合う長回しのシーンも注目です。

”好きってなに?”という他作から受け継がれる問い
死についての寛容さ(死を負のものとして問えず境なく受け入れてく感じ)は、「退屈な日々にさようならを」思い出したりして、
今泉監督が大切にしていることは一貫されているんだなぁと改めて感じました。

そして、ごはんを美味しそうに食べる映画はいい!

少しゆとりがあったら、陽の家もチェックしてみてください。
全部同じ家で撮ったかは分からないけど、外装・台所・ダイニング
なんともいい雰囲気のある家。
すりガラスの窓や扉(学校のステンドグラス)よい感じでした。
布はどこからにあったかなぁ。(タンバリンのファブリックボードがみえたのは思い違いか…??)

個人的には美子のスタイリングにはニヤニヤ。
茶系トップスに水色のエプロンと緑のキャップも可愛かった!

とにかく隅々まで楽しめます。


主人公のベクトルはまったく違うので、「愛がなんだ」が好きな人はもちろん、個人的には苦手だった人にこそ届いてほしいなぁ。
あとはmellowが好きな方は空気感が似ている気がします。

特別なことはないけど、穏やかな時間
心地よい劇場空間でぜひぜひ。

サンカヨウ、実際にみてみたいなぁ。



【ひとりごと】
おおまかにここ1か月、一筋縄ではいかないどっしりした作品(日常が殺伐としてしまっている作品)が続いたため精神的になかなか疲れておりました。
(そういう作品も好きだし自分で分かってるけど、作品に引っ張られちゃうんですよねぇ…)
あんまり褒めても真っすぐ受け取ってもらえそうにないですが(笑)
LOVE/HATEみたいな振り切り方じゃなくて、人が関係性を
模索していく過程、とりわけ今回は家族というの観られて良かった。
mmm

mmm