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ミッシングのmmmのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.9
吉田監督の新作
試写で鑑賞しました。

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失踪した娘を待ち続ける母・沙織里
夫・豊との温度差に小さな衝突を繰り替えし
頼れるのは、ただ1社取材を続けてくれている
ローカル局の記者・砂田だった。
テレビで放送されるも、有効な手がかりどころか
匿名性を担保された誹謗中傷が増すばかり。
焦燥と疲弊
心身ボロボロになる中、
時間だけが過ぎていく中で
一筋の光を見出そうともがく
人たちの物語。
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スターサンズ×吉田監督再び
エンドロールで河村さんの名前を
確認しました。

吉田監督、人間描写の鬼って
言われてるのですね。
それは初めて聞いたけど、
確かに人の持つ影とか闇というか
そんな部分を気持ち悪いくらい(誉)
リアルに描かれる監督さんだと思います。

上映前の舞台挨拶で、共感というワードが
出ていましたが、その言葉を借りるとしたら
私は、沙織里にはあまり共感できなかったです。
(まぁ、共感がすべてではないですが…)

同じ立場にないということもありますし、
(まさしく分かるわけがない)
被害者側である沙織里にも、自己保身が
見え隠れする部分や、追い詰められて
いく中で身勝手さが際立って見えたから。

…はい、SNSに書き込みをしていないだけで、
誹謗中傷する人達と私は対して変わりがないんですね。
「ほら、貴方にもそういうところあるでしょ?」
と気づかせられてしまうのが、吉田監督の怖いところです。

この作品は、空白の続きという側面もあるそうで
その中で象徴的に描かれたのがマスコミの存在
とにかく視聴率やスクープありき。
(忖度的なことは描かれていなかった)
仕事と割り切ってスクープをとって
昇進していく部下を横目に
目の前の事実に誠実であること
組織の一部として、自分の信念を
押し切れず苦悩する砂田の心の葛藤も
描かれていました。

また、娘を思いつつも、妻を支えるべく
平常心を保とうとする豊
疑惑をかけられ、姉に存外に扱わる弟・圭吾
取材クルーで新人記者の三谷とカメラマンの不破
それぞれの立場で悩み、考えながら
粛々と日々を生きていく人たちの描き方も丁寧でした。

話が少し脱線しますが、いつからか生まれた「自己責任」という言葉は
国民性も相まって、今では当たり前に使われる表現ですが、
改めて考えてみると、この言葉がもたらした闇の大きさを感じます。

自分に課する自己責任
他者に課する自己責任

みんな自己に責任もつことに精一杯。
良くも悪くも、助け合いや寛容さといった
共生に欠かせないはずのものを失ってしまった気がします。

それゆえ私自身この作品に光を見出すことは
できなかったのですが、これは沙織里の物語
沙織里に見えたならそれは確かに光なのでしょう。
観た人がそれぞれの光を
探したいと思えるといいなぁと思います。

ちなみに、色々な立場の人の内心に迫る話だと思うので、
ストーリーに起承転結を求める方はご注意ください。



◆おまけの話

石原さんが覚悟のうえ、この作品に挑まれたことは
舞台挨拶から伝わってきました。
確かにターニングポイントになるのだろうと思います。
個人的には、森優作さんと柳憂怜さんが
良い味を出されていていたのと
キャラクター色の強くない中村さん、
青木さんの安定感が良かったです。

5/17から公開です。
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