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ベネデッタのsymaxのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.8
"キリストを見た…私はキリストの花嫁…"

17世紀、イタリア・ペシア…幼き頃から聖母マリアと対話し、奇跡を起こす少女ベネデッタは修道院に入り、少女の純真さのまま大人へと成長する…バルトロメアが修道院に逃げ込んで来たその日…ただひたすら神に仕えるベネデッタの世界が一変する…やがてベネデッタの身体に現れる聖痕…

"奇跡を安易に信じてはいけない…"

17世紀に実在し、その聖痕や奇跡を目の当たりにした民衆からは崇められる一方で、同性愛者として裁かれた実在の修道女ベネデッタ・カルリーニの生涯を"鬼才"ポール・ヴァーホーヴェン監督が描く…と言っても、そこは流石のヴァーホーヴェン…老いて尚、イヤ、益々一筋縄では行かないトンガリ方で魅せる本作。

宗教が絡むだけに分かりづらい部分もあるのですが、無駄な装飾を削ぎ落としシンプルに考えると"愛だけが欲しかった"バルトロメアに対して、"愛"は勿論、"地位も名誉も権力も"欲しかったベネデッタ…二人の望むモノがすれ違う悲しき愛の物語にも捉えらるような気がしますが…?

果たしてベネデッタが起こした奇跡は本物なのかそれとも…

ヨーロッパ中をパニックに陥れたペストすらも味方に付け、着々と権力を手に入れていくベネデッタのサクセスぶりはある意味痛快で、その複雑なキャラクターを気高く、そして狂気とも取れるヴィルジニー・エフィラの演技は、ヴァーホーヴェンのトンデモ演出と相まって最良の雰囲気を作り出しています。

そして圧巻なのは、やがてベネデッタと敵対?する関係となっていく修道院長フェシリータを演じたシャーロット・ランプリング…何となくベネデッタに胡散臭さを感じつつも儲けを計算する強かさとズル賢さ…自らの選択が生んだ結末に対する慟哭…誠に素晴らしい演技…

久々に大きなスクリーンで"ポール・ヴァーホーヴェンの世界"をたっぷり堪能させて貰ったのでした…
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