すずき

ベネデッタのすずきのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.9
ペストが流行する近世ヨーロッパ。
大都市でない為か、病害を逃れているペシアの町の修道女ベネデッタ。
彼女は資産家の親が高い寄付をして、幼い頃から修道院に務めている。
家族の虐待から彼女に救われ修道女となった、天真爛漫なレズエロ娘・バルトロメアは、ベネデッタの事が気になっていた。
ある日ベネデッタはキリストの姿を幻視し、彼の花嫁となる体験をして、身体には聖痕が現れる。
バロトロメアはそれを、ベネデッタが成り上がる為の狂言とは思いつつも、彼女に付き添い「関係」を続けていくが…

数々の名作を世に送り出したヴァーホーベン監督の最新作。
御年84歳になりながらも才能は枯れず。
尖った名作を作り続けるヴァーホーベン監督は、映画界屈指の天才の1人だと個人的には思う。
まあ彼の作品全部見たわけじゃないんだけどさ。

聖女か詐欺師か、どちらともとれるベネデッタの奇蹟。
状況証拠こそ彼女の自作自演を疑う事が出来るが、決定的な証拠はない。
何より彼女自身が、奇蹟を全く疑っておらず、まさしく神のした事だと信じている。
一方、教会側は彼女が本物か偽物かには大して興味ないようだ。
彼らは彼女を聖女と認める事で自分に何の恩恵があるか、しか考えない。
劇中に一切善人が現れず、ベネデッタを中心に様々な邪な思惑が巡る。
大衆は神性への畏れと、ペストへの恐れから、ベネデッタをアイドル(本来の意味で)として崇めるようになる…。
聖は俗に塗れ、常に背徳と死が背中に迫っているような、壮絶な世界でした。

ヴァーホーベン監督らしいブラックなユーモアは、今回はやや少なめ。
しかしクライマックスの「殺しのキッス」には笑った。
あと「聖母ディルド」にはドン引き。人の物を無許可で勝手に削んなよ!