三樹夫

ベネデッタの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

『ショーガール』の修道院版とでもいうか、どんな手を使ってでものし上がるカッコいい主人公にクズ男という、バーホーベン相変わらずだなと安心する映画。修道院から追い出されたバルトロメアへの民衆の仕打ちは、『ブラックブック』のウンコぶっかけと同じで、こいつは悪い側だから何やってもいいと、自分が白い側に立っていると思っている者の醜さが表現されている。
聖痕が出来たことで修道院内での地位が上がり個室をゲット。やることといえばお気に入りと思うままにレズ行為という、やっと自分の部屋を獲得した中学生かな。マリア像ディルドという罰当たり天井を一気に突破するアイテム出してくるあたりバーホーベンはキレキレ。終盤はマリア像ディルドがどこにあるかが主人公の生死を決めるサスペンスみたいになってて笑ってしまった。そんな主人公を快く思わない者からの追求と糾弾が起きるが、教皇大使は愛人囲ってるわ修道院は信心より金の世界だわで当然主人公を応援する。

主人公がどうやってのし上がっていくかというか、ピンチ打開策は聖痕現象の一本鎗なのだが、作中最後まで本当に聖痕が出来たのかそれとも狂言なのかは明かされない。毎回近くにガラスが有るため狂言と思えるし、一方ペシアの町はペストに襲われなかったなどで主人公に聖なる力があるのかもととれる。
ただ、主人公の手のひらに聖痕ができていたけど、キリストが杭を打ち込まれたのは手のひらではなく手首なので、本当に聖なる力で聖痕が出来たなら手首に現れるはずなので、あの聖痕は主人公が自分でつけたもの。HPでバーホーベンが出してるメッセージには、「ベネデッタの物語の独特な性質に惹かれたんだ。17世紀初めに修道女の同性愛についての裁判があったこと、裁判の記録や本書のセクシュアリティの描写がとても詳細なことにも感銘を受けた。そして、完全に男が支配するこの時代に、才能、幻視、狂言、嘘、創造性で登り詰め、本物の権力を手にした女性がいたという点だ」とあり、才能、幻視、狂言、嘘、創造性で登り詰めってことは、聖痕は主人公が自分でつけたもので間違いないだろう。意識的に聖痕をつけたのかそれとも無意識につけたのかは何とも言えないが、主人公とバルトロメアが幸せになって欲しかった。
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