幽斎

人狼ゲーム 夜になったら、最後の幽斎のレビュー・感想・評価

3.8
未体験ゾーンの映画たち2022。既に「ザ・ビーチ」「アクセル・フォール」「マーシー・ブラック」「マザーズ」「デモニック」「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」「クリフハンガー/フォールアウト」レビュー済。シネリーブル梅田で鑑賞。

本作はRed Storm Entertainment社のゲーム「Werewolves Within」の映画化。ですが、私は人狼ゲームのルールは分るが実際にゲームでプレイした事は無い。人狼ゲームは、市民と人狼に分かれ人間を滅ぼす人狼を会話の中で推理、処刑するゲーム。プロットはメッチャ私向き(笑)。日本だとパーティーゲームのイメージですが、プレイヤー参加型なので、想像以上に映画化はムズイと思われる。しかし、邦画で9作品も有るとは知らなんだ。流石の私も桜庭ななみは知ってるよ(笑)。

ゲームは中世の村を舞台にするが、本作は現代が舞台。私は邦画通の友人の勧めで「人狼ゲーム デスゲームの運営人」を見たが、コレ昔で言うアイドル映画じゃん、知ってたけど(笑)。分るのは山之内すず位かな。トークゲームは駆け引きが主体だが、村人や占い師、霊能者や狩人と言った役職を与え、人狼の正体を暴き処刑するか、それとも人狼に依って村人は全滅するか。そんな映画だと思ってた。

邦題もレビュー済「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」パクリで、それも伏線なのか(多分違う)。ミステリー映画で似たテイストの名作「殺人ゲームへの招待」。即興スタイルのコメディと謎解き、古い言葉でハーモニーが秀逸。監督は「現代版ファーゴだ」と語るが、スラップスティックが古臭いとは思わないけど、会話劇の方がインテリジェンスに見えるのは吝かでも無い。群像劇を喜劇に転換した事で、好き嫌いが分かれる事は間違いない。

Josh Ruben監督は豪華スター共演のコメディ「Death to 2021」劇場公開には至らずNetflixに回されたが、本作もトライベッカ映画祭でお披露目されたが、COVIDの影響で2週間でVODへ回されたが、辛口の批評家から「Certified Fresh」ゲーム映画として最高評価を得て話題を呼んだ。iTunes Storeのインディペンデント・チャートで1位を獲得。ウズベキスタン出身Milana Vayntrubが出色の存在感。Sam Richardsonはレビュー済「プロミシング・ヤング・ウーマン」同じく良い奴だった。

アメリカのオーディエンスも忖度が多いのでアテに為らないが、本作もコメディ得意監督なので、思いっ切り嫌な予感がしたがその通りだった。これを見ると「人狼ゲーム デスゲームの運営人」の方が真面目に人狼してる。本作は最初だけで、後は悪ノリのオンパレード、逆に言うならこれが人狼ゲームかと憤慨する方も居るでしょう、邦画のイメージなら間違いなく酷評の的だろう。

良い点は人狼ゲーム初体験でも全然問題ない。洋画で人狼ゲームと言えば、古典的な謎解き映画「スリラー・ゲーム/人狼伝説」名優Peter Cushing主演、大富豪に招かれた数人の男女。彼らは過去に陰惨な事件に関係、招待主は犯人を探そうとしていた。その犯人こそ人狼・・・推理小説「吹雪の山荘」プロットに絡めた異色ホラー。この作品はクライマックスに「さて、誰が人狼でしょう?」途中で映画が止まる斬新な展開、つまり劇場でリアルタイムで推理する時間を与えた。伏線が乏しいのが玉に瑕だが、我が家のソニーのVHSデッキは今も現役(笑)。

邦画の複雑なルールも無く、ストレートで分かり易い設定なので、パーティー・ムービー的な楽しみ方も出来る。日頃スリラー映画を観てもサッパリ結末が解けない貴方も(笑)、気軽に楽しめる点は悪くない。邦画との違いは、リアルな人狼が混ざってるので、人間が仮の姿と言うホラー・テイストも味わえる。良い方に考えればシリアスに傾かず、ブラック要素満載のドタバタ劇。全員が疑心暗鬼に陥り、結局人間同士で勝手に殺し合うシュールな展開は、オリジナリティな人狼と言える。

私の様な伏線のアラ探しをする者の為に、前半の説明パートが長いのが難点。退屈なキャラと状況説明を乗り越えた先に、盛り上がる後半は割と期待して貰って良い。この展開の切れ味の良さが、アメリカの高評価の所以だろう。スリラーとして綺麗にクローズする後腐れも無いので、ラストの「お前が人狼だったのか!」には何の異論もない。コメディ全開でFilmarksの評価が低い?、全然気に為りませんけど(笑)。

人狼がバリバリ襲ってくる訳では無いので、生真面目な方は遠慮した方が賢明です。
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