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こちらあみ子のbuddyのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
3.4
《子供の純粋さは時には危険を伴う》
作品のトーンやポスターアートからは、小さな女の子の日常を淡々と描いたほんわかした作品を想像していたけど、実際には胸が締め付けられるようなとても複雑な内容だった。

この作品では、子供の純粋さが癒しや支えになる場合もあれば、時には誰かを傷つけたり、弊害となる場合だってあることを主人公・あみ子の等身大の目線を通じて、辛辣に描かれている。
あみ子視点の世界だからこそ、何が間違っていてどうしたらいいかという答えは簡単には出せないし、否定することもできない。

誰しもが子供の頃に、突然周囲が不穏な空気になったり、理解できないまま自分の在り方が間違っていることに気付かされた経験があるはずだ。その時、誰かがその間違った部分を教えてくれれば楽だけど、誰も教えてくれず、自分だけが置いてけぼりになり周りの環境が変わっていく結果になると、とてつもなく辛くて居ても立っても居られない気持ちになる。この作品はそのムズムズした感情をうまく物語に仕立て上げた印象だ。

また、あみ子という女の子を通じて「個性」という言葉が持つ危険性にも気付かされる。あらゆる個性を大切にし互いに認め合い、共存していきましょうという風潮があるけど、無理に一色たんにさせることが本当に社会にとって良いことなのか?

この作品は静かで小さな物語の中に、非常に多くの問いかけが詰まった一本だった。
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