強固な貞操観念をもつ女子大生（山科ゆり）が、バーに勤務する奔放な旧友（宮井えりな）と再会する。性に消極的な女性の自己実現を描いている、日活ロマンポルノ。

純情メガネ娘の山科ゆりが、貪欲ユルユル娘の宮井えりなに接近。異なる境遇に置かれているふたりの、（どこかで捻れている）共依存関係がエモーショナルに描かれる。宮井えりなにバイセクシャルの雰囲気をもたせているところが醍醐味。

タイトルに付いている「わいせつ事件」要素は、中盤部に入ってから本格的に動き出す。フラワーハットにベルボトムという出で立ちの志賀圭二郎が、無断侵入したり、盗聴器を仕掛けたり、のらりくらりと行動する。

そして後半部に入ると、山科ゆりの心の闇が開示されて、処女崇拝の考古学者（江角英明）を交えた、荒唐無稽なドラマへと転調。貞操観念に束縛された女の「敗北の美学」を、ヘンテコ演出で鮮やかにスケッチしている。

気分がすんごくダウナーな時、何を観たらいいかなと思って、頭使うやつは疲れるし、宇能鴻一郎系はアリな気がするけどあの世界観についていけるほどお気楽極楽な気分でもない、そんなときの桂千穂×宮井えりな×山科ゆり。この顔ぶれだけでテンションが上がる！宮井えりなと山科ゆり、二人とも演技うまいから見応えある。尊い。エモい。何よこれ。男に傷ついて百合で救われる、セーラー服百合族かよ。処女な埴輪とかヒッピー風絵描き織田俊彦とかおっぱいがまだ酔ってるよとかぶっ飛びすぎの桂千穂節。桂千穂にありがちな終盤のとっちらかりも、「おーいはに丸」（懐かしい）ワールドが芸術的に繰り広げられて感動すら覚える。「色情妻肉の誘惑」並みの狂った脚本を一寸たりとてコメディに振れずに真面目に撮りあげて感嘆しかない。これは観ないと損。こういう映画に出逢えるから人生捨てたもんじゃないわ。

山科ゆりと埴輪。恐怖を煽るような変な音楽。桂千穂でよく見る無駄な落下死。桂千穂のキチガイのシナリオを至ってド真面目に撮りきると、なんだか本当によくわからないただただ異常な映画が剥き出しになるだけという、ある意味実験作。「埴輪が動いた、埴輪が動いた…」。カルト映画の類い、この困惑は嫌いじゃない。