Shin

ディア・エヴァン・ハンセンのShinのレビュー・感想・評価

5.0
『wonder 君は太陽』と『ウォールフラワー』のスティーブン・チョボスキが監督で、予告にも興味を引かれ鑑賞してきました。

後で知りましたが、2017年にブロードウェイでトニー賞を6部門受賞しているんですね。主演はパッと見には地味だなと思ったけど、舞台のキャストそのままなんだとか。賛否が分かれそうな作品ですが、僕は満点です。

主人公のエヴァン・ハンセンが自分に手紙を書くところから始まりますが、これは「ロールレタリング」と呼ばれる治療法らしいです。抑えている自分の気持ちをありのままに書くことで解放されるというもの。僕も演技レッスンでやったことがありますが、確かに感情が解放され、うまく気持ちを表現できるようになります。エヴァンは自分の為だけだった手紙が、他人(コナー)に渡ることで、どんどん他者とつながっていきます。

エヴァンは"社交不安障碍"を患っている設定です。初めて聞きますが、自分がその場にふさわしくないと不安になり、動悸や発汗、発作を起こしてしまうんだとか。エヴァンは学校でも友達がおらず孤独を感じている。そんな彼の気持ちを代弁してくれるのが歌であり、ミュージカルになっている部分です。たまに他のキャラクターも歌います。歌になっている分感情が余計に伝わってきます。『ラ・ラ・ランド』や『グレイテストショーマン』を手掛けたベンジ・パセックとジャスティン・ポールの楽曲はもう最高。

エヴァンとコナー(彼も精神病を抱えている)が一緒に踊っているシーンは、本当にそうであったかのようで泣けてきます。かくして、エヴァンの"手紙"や"勝手な思い出"はコナーの両親や家族を巻き込みながらSNSを通じ世界中の人々とつながっていく。

この物語の凄いところは、こうして積み上げてきた架空の感動的な創造を転機を迎えたところで手放し、新たに本当の事実とつなぐところです。それがポスタービジュアルの"思いやりでついた嘘。そしてたどりついた本当"によく表れています。

キャストもとても良くて、脇を固めるジュリアン・ムーアやエイミー・アダムスはもちろんのこと。同級生のアラナ役のアマンドラ・ステンバーグも一見強そうでいても陰では必死に闘っている姿をうまく演じていました。主人公のエヴァン役のベン・プラットもやたら歌がうまい。

この作品は2015年に初演されたミュージカルが基になっていますが、このコロナ禍において、友人や家族との本当の"つながり"がいかに大事かをあらためて認識させてくれるものでした。万人には奨められないある意味ひねくれた映画ですが、僕は今年一番泣きました。


*グルテンフリーをやっている身としては、あのようなイジられ方は苦笑い😆

#グルテンフリー
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