てつこてつ

ディア・エヴァン・ハンセンのてつこてつのレビュー・感想・評価

3.7
いまだにそれが良いのか悪いのか・・言葉ではなく「心情を察する文化」の日本で生まれ育った自分には時折不自然にさえ感じる、親子間であっても時にはお互いに言葉に出して愛情を確認し合う習慣がある、誠にもって、アメリカらしい作品。また、今の時代に合った繊細なテーマだと思う。

元来、ミュージカルは好きなので、それこそ「オペラ座の怪人」や「レ・ミゼラブル」「グレイテスト・ショーマン」のようなフルオーケストラを駆使した壮大なナンバーがずらりと詰め込まれた大作もいいけれど、今作のようにキャラクターの繊細な心情をシンプルな伴奏に乗せて切々と歌い上げるスタイルも、それだけ歌詞に込められた感情、歌唱力の高さがストレートに心に染みこんできて、なかなか素敵。

ストーリー自体はとってもシンプルで、善意から出たちょっとした嘘が後に大騒動に発展してしまう過程で傷つきながらも成長していく、とってもナイーヴな高校3年生の物語。主役を演じたベン・ブラントは、さすがトニー賞を受賞した舞台版のオリジナルキャストだけあって、キャラクターの繊細な心の揺れ具合を見事に表現できているし、やっぱり透き通るような歌声が魅力的。ただなあ、舞台の初演が2017年であったって事を考えると、いくら大人びた高校生が多いアメリカにしても、今の年齢で高校生役ってのは、ギリギリセーフって感じかな。

対して主人公が思いを寄せる女子高生を演じた「ブックスマート」のケイトリン・デヴァーは、また新しい彼女の魅力が発見できた感があって嬉しい。

エイミー・アダムス、ジュリアン・ムーアの二大女優が、しっかりと脇を固めてしっかりと締まった作品として仕上がっているのも秀逸。
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