たく

Le ragazze di Piazza di Spagna(原題)のたくのレビュー・感想・評価

3.6
ローマを舞台に、縫製工場で働く仲良し3人娘の青春のひと時を描く群像劇。邦題「スペイン広場の娘たち」で検索してもFilmarksでヒットせず。マルチェロ・マストロヤンニがキャスティングされてて、いつ出てくるかと思ってたらいい加減終盤のご登場で面食らったけど、ストーリーを着地させる重要な役回りだった。ルチア・ボゼーの際立つ美貌に惹きつけられて、特にドレスアップしたシーンのオーラがすごかったね。この頃のイタリア映画の女優は、「狂った夜」のエルザ・マルティネッリや「激しい季節」「三月生れ」のジャクリーヌ・ササールなど綺麗な人が多いイメージがある(調べるとジャクリーヌ・ササール本人はフランス人だった)。ルチア・ボゼーは、なんとフェリーニの「サテリコン」に未亡人役で出演してるんだね。

ローマの名所であるスペイン広場の向かいの縫製工場には、いつも仲良くしてる3人の若い女性が働いてて、彼女たちと挨拶を交わす間柄の大学教授がナレーションで語る3人それぞれの恋の一騒動が展開していく。大所帯の家族と暮らすマリーサには恋人のアウグストがいて、彼がいつ結婚してくれるのかとヤキモキしながら過ごしつつ、その美貌からモデルの仕事の声がかかってアウガストの方が引いてしまうんだけど、彼がマリーサの父親のアドバイスを受けて暴力を振るってでもモデルを諦めさせようと画策するのがびっくり。これにはさすがに時代の違いを感じさせる。

エレーナの恋人である会計士のアルベルトはいかにも紳士的で、エレーナにとって理想的な相手と思われるも、彼が人目を気にしてばかりで何だか怪しい。これが終盤の騒動につながるわけだけど、典型的な「男の薄情、女の愛情」だったね。恋に忙しいルチアにはいつも新しい恋人がいて、彼女に思いを寄せてる騎手は自分の背の低さがコンプレックスになっており、器具を使って背を伸ばそうとするのが滑稽かつ哀しい。終盤でようやく登場するマルチェロ・マストロヤンニにはまだキャリア初期の初々しさが漂ってて、彼が傷心のエレーナの救世主となって3人娘がそれぞれ収まるところに収まりつつ、スペイン広場から人生を一歩踏み出す幕切れが爽やか。ルチアが終盤で最悪の事態を予想するきっかけになるルイジ・コメンチーニの映画が興味深かったけど、調べてもどの作品か分からなかった。
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