超貴重なセッション音源や、モンク、ホールのアレンジ過程などお宝音源で、そこだけでも価値のある作品ではあるのだが、ではドキュメンタリーとして、映画としてはというと、まとまりの無い焦点のボケたものとなっていて残念だ。
たぶん中心にあるのは「ロフト」そのものだと思うが、だとするとユージーンの伝記的な部分が必要だったのか疑問。
完全にロフト内の映像と音だけで構成して、その8年だけを描いた方が密度が高いし、当時の有名ミュージシャンの貴重な記録となっただろう。
作品前半が完全にユージーンに焦点が合っていて、逆にそのまま彼の伝記として仕上げるのもアリだろう。でも今作ではユージーンに対しての掘り下げがほとんど無く、もちろん晩年の日本での生活や妻子についてはノータッチ。
4000時間に及ぶ音源、4万枚の写真という豊富なネタがありながら、的確にまとめられなかったのは監督の力量不足が原因。
使用した録音は映画化にあたり、かなり修正をしているとは思うが、それでも当時のレコードに引けを取らない音色で録れていることに驚いた。日本製マイクのおかげか?
せっかくの貴重な資源を活かしきれなかったが、それでも音楽と映像は感動を与えてくれる作品。
余談。
1957年に日本製マイクのほうがゲインが2倍あるほど性能が良かったってのに驚きだ。
当時なら普通はNEUMANNとかSoundeluxeあたりを使いそうなものだ。
日本製ってたぶんSONYだろうな。
さて、現在でもビンテージマイクなどと言って1960年代あたり
の昔のマイクを目の飛び出るような高価で売っているが、どうなのよ?
個人的に楽器や音に関する物の「オールド」「ビンテージ」という価値観に否定的なので、つい「いや、それ単なる中古でしょ」とツッコミたくなる。
楽器関係のオールドやビンテージでの笑える話が多々あるのだが、それはまたの機会に・・・・