がぶ君

裁かるゝジャンヌのがぶ君のレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
3.2
 真の信仰とは何か
 ジャンヌダルクの異端審問を基にした映画。狂信者ではなく、あくまで人間ジャンヌダルクを描くことで本当の信仰とは何かに迫る。
 映画は異端審問の場面と火刑の場面に分かれる。
 異端審問の場面では、教会の権威を傘にジャンヌを追い詰める男達。彼らの醜さが表情豊かな演技により丁寧に演出されている。ジャンヌの側は毅然と対応するシーンはあるもの、執拗な攻撃により徐々に弱っていく様が丁寧に描かれている。教会側の硬軟合わせた老練な攻撃は実に生々しい。
 審判の終盤は拷問部屋で行われる。この場面では、ジャンヌと男性達の口、拷問器具を交互に映すことでジャンヌの不安を演出している。そして死の恐怖からジャンヌは異端だと一度は認めてしまう。
 だが冠を見たことで再び信仰を貫こうとするジャンヌ。そんな彼女の姿に真の信仰を見出す若い男性。彼がジャンヌに火刑になっても信仰を貫くことで救済が訪れるのか?と訊くと、火刑の後には死が待つだけだと答える。救済は来ない。それでも信仰を貫く。自分の心を信じ抜くこと。それこそが真の信仰ではないだろうか。
 そして火刑のシーン。そこには苦悶の表情を浮かべながらも、最後まで神を信じる彼女の姿があった。
 このようにジャンヌの異端審問を通じて真の信仰とは何かを問うた映画であった。
 
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