安堵霊タラコフスキー

裁かるゝジャンヌの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
5.0
特徴的な手法をあえて採用しなかったものの荘厳で見応えのある映画ばかり遺したドライヤー作品で、当時から考えると最も斬新で実験的な作品

ジャンヌダルク裁判に参加する人々をほぼクローズアップのみで撮影し、しかもその大半が主人公ジャンヌのカットという大胆さは同時代の他の作品では全く見られないもので、それでいて涙ながらに語るジャンヌの姿の哀れさと迫力といったらなく、その迫力はおそらく声という情報がないことも働いているのだろうが、ここまで語る姿が強烈なのは独裁者のラストにおけるチャップリンくらいしか思いつかない

その後の斜め下から見上げるようなカットばかりの処刑シーンも鮮烈極まりなく、炎に炙られながら息絶えるジャンヌの姿は何度見ても瞬きを忘れるほど見入ってしまう

シーンが最も映える映し方を熟知したかのようなカットで見る者を魅了して止まないドライヤーは、同時代のエイゼンシュテインやムルナウと同等かそれ以上の天才映画監督だ