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サンマデモクラシーのKUBOのレビュー・感想・評価

サンマデモクラシー(2021年製作の映画)
3.6
遅まきながら、話題のドキュメンタリー『サンマデモクラシー』を見てきました。

まず、ドキュメンタリーとして間口が広い! 沖縄のドキュメンタリーというと「難しそう」という垣根があると思うけど、これはそこのところがとても見やすくできている。

本土復帰前の「アメリカ世」の時代、支配者であるアメリカの高等弁務官が「サンマ」に課した税金20%を不当だとして訴えた「サンマ裁判」を巡る、冗談のような本当の話。

主人公は、この裁判を起こした魚屋の女将「玉城ティナ」じゃなくて「玉城ウシ」! 大柄で佐藤栄作そっくりの女傑だったという玉城ウシだが、一般人なのでカメジローのように映像が残っているわけではない。

そこを映画としてどう補うかと言えば、まずお話しを進めるのがうちなーの噺家「志ぃさー」さん。このうちなーぐち混じりの沖縄イントネーションの語り口がたまらん!

次にナレーションがおなじみ川平慈英さん! 「絶対に負けられない戦いが…」とか出てきちゃうと、クー!

また、そのウシさんと共に裁判を戦う、もうひとりの主人公が、我が第二の故郷「宮古島」出身の下里恵良、通称「下里ラッパ」! 

さらに、この裁判の先に待つ本土復帰を牽引した瀬長亀次郎。カメジローについては佐古忠彦の2本の作品に詳しいが、本作でも軽く触れられる。

アメリカが「民主主義のショーケース」にすると言って沖縄の人たちに強いていた支配は果たしてどれほどのものだったのか?

そのアメリカの支配下で魚屋のおばちゃんが起こした訴訟の行方は? そしてその裁判の結果が沖縄にもたらしたものとは?

作品中でアメリカの高等弁務官が語る「自治は神話」という言葉。「日本に復帰したとしても沖縄は一地方自治体。琉球政府として行なっている今の自治より良くなるとは限らない」という意味だったそうだが、翁長知事に「私は戦後生まれなものですから、歴史を持ち出されたら困ります」などとふざけたことを言う輩が日本国の総理大臣をしているわけだから、恥ずかしいことに、この言葉は大いなる皮肉になってしまった。

普段から三上監督や佐古監督の作品に触れている方には物足りない面もあるかもしれないが、初めて沖縄のドキュメンタリーを見るといった方にはたいへん見やすい作品となっている。入門編として、ぜひ!
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