麟チャウダー

ガンパウダー・ミルクシェイクの麟チャウダーのレビュー・感想・評価

3.8
『ジョンウィック』の世界観におもちゃ箱をぶちまけたような雰囲気の映画。
馬鹿馬鹿しいドタバタコメディに乗じた、グロいアクションも愉快。思ってた以上にエグかった。
血すらも色彩の一部、衣装の柄にしてしまう細かい部分のセンスも感じた。
照明の色使いや、舞台や小道具まで色合いや遊び心など、拘りがあって楽しい。映像面でのセンスや雰囲気がめちゃくちゃ好みだった。

アクションもいちいちドタバタして思い通りに行かず、緊張感の無い場面なのに変な緊張感を感じるから、脳の緩急を感じる部分がバグっちゃう。
真面目なのかふざけているのか濁したような空気感のおかげで、ツッコミを回避するズル賢さもあって下らないんだけど、きちんと面白かった。

ひたすら殺し合っている展開に、うんざりしないバリエーション豊富な戦い方が面白かった。前半は割と映像に凝っててセンス爆発って感じで、後半は軽く血みどろの戦いで爽快だったし、常に変化球な楽しさがあった。
律儀に武装解除する犯罪集団に可笑しさもありつつ、銃によってパワーバランスがひっくり返る展開にはニヤリ。殺し屋社会や安置など、随所の『ジョンウィック』感にもニヤリ。

それぞれのキャラの役割やキャラ造形も拘りを感じた。司書たちが三位一体として役割を補い合ってる感があって良かった、アンジェラ・バセットが感情、カーラ・グギーノが頭脳、ミシェル・ヨーが肉体と精神みたいな。武器選びや服装など、装備品にまでキャラ性が出ててこの映画の設定を考えたりしたの楽しかっただろうなーって思った。


カレン・ギランの仄かなネビュラ感も相まって親子の愛情不足による感情の未発達感が上手くて、少女との交流を通じて“あの時の母”の気持ちや、“あの時の自分”の気持ちに気付いたりする感情の変化なんかも良かった。
動揺してる内側と、外側に動揺を出さない感情のせめぎ合いとか、心の葛藤の表現が流石に上手すぎる。だけど淡々としてる感じのあるキャラ性で、役との相性が良くてハマってた。
アクションも、色んなパターンを見せてくれるし、大真面目に可笑しな戦い方するのも良かったし、アクション慣れもあってか大暴れしてくれて嬉しかった。

レナ・ヘディから、まだ見せ場もないのに“仕事できます感”が出てるのが不思議。娘からの補足説明もあり何やら強者らしいけど、頭脳プレーはほぼ無くて、2丁拳銃で肉弾戦するあたりめちゃくちゃ脳筋に感じた。
表情から滲み出る気まずさや申し訳なさが切なくて、基本的には無表情で人を殺しまくるけど、娘に見せる表情は心に来た。

アンジェラ・バセットは、ブラックパンサーの母親かぁ、あの時ほど感情爆発させる場面が無くてあまり見せ場は感じなかったけど、トンカチ無双には笑った。民族衣装やドレスのような姿しか見たことが無かったので、スーツ姿が格好良くて新鮮だった。そして、意外と小柄な人だったんだなーって思った。

カーラ・グギーノの感情を抱いていない虚無った目が良い。そこから溢れる母性や面倒見の良さや寛容さにどこか不思議な怖さもありつつ、カーラ・グギーノ特有の不気味な優しさが炸裂してて良かった。そんな雰囲気を醸し出す演技力と、トマホークをチョイスするキャラ造形もなんか上手いなーって思った。

ミシェル・ヨーって意外と小柄だったんだなって、カラン・ギランと並ぶとそう思った。なのに、平然と無双していく強さには笑ったし、肉弾戦特化型と思い込んでいたのでアサルトライフルぶっ放す場面には痺れた。鬼に金棒やん。


全体通して、個人的に刺さったので大満足。単純な話だし、気分転換に最適な映画だった。めちゃくちゃ、ハマる人にはハマる映画だしハマらない人にはハマらない映画、だなって思った。
強いて言えば、音楽がもう少し劇的であればなぁ、心地よすぎてあまり印象に残ってないや。
麟チャウダー

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