悪魔の毒々クチビル

死霊のはらわた ライジングの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

4.5
「次は誰が腐りたい?」

アパートの地下から「死者の書」を見つけて、ついでに呪文入りのレコードもかけたら案の定死霊がやって来たお話。


言わずと知れた名作ホラー「死霊のはらわた」の最新作。
これまでオリジナル3作に加えリメイク版やドラマ版、ゲーム化等々様々な形で現在まで新作が作られています。
俺はリメイク版は観ていなくて、ドラマも1話しかチェックしていませんが初期の3作はどれも違った作風でとても好きです。

今作に関して言えば作風は1に近いシリアスな内容と言いますか、人によっては笑える場面はあれど2以降にあった狙ったようなおふざけは特に無いです。
ボロアパートを舞台に、薄暗くて閑散とした雰囲気の中で血とゲロが厭な湿り気を発するホラーとしては素晴らしい環境下でお送りしていました。

まずオープニングでこのシリーズお馴染みシェイキー・カム的な演出で「おっ」となりながら、「今ならこう言うのドローンで撮ったりするのかな?」とか思っていたら本当にドローンでした、な外しが現代っぽかったですね。
予告編も確認していなかったから、ここだけ従来の山奥の小屋が舞台で「あれ?」とはなったんだけど、本編はこの前日に起きた事でした。
あの浮遊しながらのタイトルインも格好良いねぇ。

少年が地震の影響で空いた穴から地下室を見つけ、そこにあった死者の書を持ち帰った結果、母親が取り憑かれるという自分の好奇心のせいで他人が真っ先に犠牲になるいつものパターンで地獄を見ることになります。
この時流したレコードの音声はブルース・キャンベルだったりします。
今回取り憑かれた母親エリーを演じるのは「ブラッド・シップ」でも何かに取り憑かれていたアリッサ・サザーランド。
死霊化したメイクは当時の良い塩梅のチープさは無く、最近の悪霊、エクソシスト系でよく見掛けるタイプですがクオリティは高いと思います。
アリッサの取り憑かれてからの極悪ハイテンションぶりも、これぞ「死霊のはらわた」と言える豹変でキモ怖い。

メインの登場人物がエリーの子ども3人と、彼女にたまたま会いに来ていた妹ベス以外は同じ階に住んでいる住人が数人。
まぁ住人はただ死ぬ為に出てきただけながら、子どもにも容赦無い展開は良かったです。
ただどうせ死ぬならもっと派手に逝って欲しかったかな。
末っ子キャシーは途中から血に塗れてガタガタ震えながらで、子役ながらガッツリとゴアい怪異に巻き込まれるタイプのキャラを見事に演じていました。
R指定なので、演じたネル・フィッシャーが今作をちゃんと観られるのはまだ先だとは思いますが。

ゴアシーン自体は頭皮剥がしたり目玉喰らったりと、充分な出来ながら決して超強烈って程ではありませんでしたがラストの憑依合体したアレとベスのバトルは、尋常じゃない量の血と肉片が飛び散る素晴らしいシーンでした。
血糊の使用量は6500Lらしいですが、ここと「シャイニング」とどん被りのエレベーターシーンがメインでしょうね。

強いて言うならシリーズお馴染みの痛々しい描写が、意外とそこまででも無かったのが残念…ってほどでもないけど少しだけ拍子抜けでした。ピーラーでゾリーン!!だけゾッとしたけど。

ベスのラストの血塗れになりながらショットガンとチェーンソーという鉄板の武器で覚醒するくだりも、めっちゃ格好良かったし全体的には非常に満足いく出来栄えでした。
「死霊のはらわた」と言えば2と3みたいなアホ全開のノリがあってこそ!を求めるファンにはオススメ出来ませんが、シリーズ関係なく一つのホラーとしてかなり印象に残るであろう内容なのも強いなぁと。
仮に俺がシリーズ観たことない状態で観たとしても、凄く気に入っていたと思います。