悪魔の毒々クチビル

レックの悪魔の毒々クチビルのレビュー・感想・評価

レック(2007年製作の映画)
4.4
「アンタうるさいよ!ちょっとあたしが話してるんだから」

消防士の密着取材をしているレポーターらが、救援要請のあったアパートに行って地獄を見るお話。


ホラーファンにはかなり知名度も高いであろう作品でござんしょ。
俺は高校生の頃友達2人と観たある意味思い出深い作品です。
友達が「帰りにGEOで映画借りてウチで観ない?」と誘うもんだから、俺が「これ前から観たかったんだよね」と今作を選んでしまったが運の尽き、3人で滅茶苦茶ビビりながら観たのは今でもしっかり覚えています。

改めて考えると、POVモノに於いて苦手である「手ブレの酷さ」とか「カメラに拘りすぎて自己中心的な部分が強調されて超ウザい」とか、そう言うネガティブな点もちゃんとあるんだけど、今作はそれを踏まえても強烈な印象を残す作品だと思います。

70分台というコンパクトな上映時間の中で、活発系なゾンビモノのスピード感と閉鎖された舞台ならではの絶望感、そして恐怖演出と各々の要素を上手いこと全部乗せして突っ走るノリが良いね。
個人的には消防士のお兄さんが上から降ってくる場面がかなりショッキングで、初見の当時「何かこえーババア出てきたなー」くらいで耐えていた俺ら3人もこのシーンから「あ、これめっちゃヤバい…」と身構えるようになりました。

作品によっては怪物をショボいCGで映してしまい、この手法の魅力の一つであるリアリティさが台無しになる事も多々あるんだけど、今作は基本的にアナログな撮影法で乗り切れる内容なので映像面で浮いたシーンが無かったのも良かったかなと。2からはまたちょっとそこら辺も違って来ちゃうんですけど。
噛み千切られた頬とかかなり痛々しかったですね。
あとはPOVだと脇役がより識別し辛いんだけど、今回は住人のインタビューパートがあってちゃんと誰が誰だか分かるのも地味に有難い。まぁ最終的に何人かはよく分からない間にフェードアウトしちゃってたけど。
何故か日本人の家族も居たけど、他の住人に中国人と間違えられたりとしれっとこう言う極限状態に自然と出る差別意識を描いていました。

感染者のアグレッシブな演技はおばさんも少女も見事なもので、POVでの臨場感も相まってかしっかり怖い。
屋根裏部屋にいたアレも襲い掛かる場面は勿論、ナイトスコープ越しにユラユラ彷徨う姿も非常に不気味で良いね!

当時はまだ段々とホラーにハマり出した頃だったので、「もうダメだ、俺は噛まれた。早く逃げろ」と潔く諦めるキャラがちょいちょい居たのも新鮮だったし、唯一頼れたあの人がちょっと別行動した隙に感染していた絶望感がダイレクトに伝わって来たりと、ホラー慣れしていなかったが故に色々な描写に敏感だったんだなと後に何度か見直して思いました。
とは言え久々に観てもめっちゃ面白いし、何度観てもビビるもんはビビる。

強いて言うなら初見の時はそこまで気にならなかった主人公アンヘラのウザさが、見返す度に気になっていくくらいか。
昨日数年振りに観た時も、カメラマンのパブロに話を盗み聞きさせておきながら「ねぇ何て言ってるの?何て言ってるの?」と執拗に邪魔してくる所は「後で纏めて聞けや」とイラっとしましたわ。
シリーズの主人公で言ったら3のチェーンソー花嫁さんの方が断然好きです。

結局シリーズ通して全ての元凶であるメデイロスについてはイマイチ分からず終いだったんだけど、どうやら彼女についてより掘り下げたシリーズモノのビギニング系に位置するコミックがあるらしい。
興味あるけど全編スペイン語コミックは流石にしんどいなぁ。

俺みたいにホラーにハマる前も後もビビりな人間からしたら相当強烈な作品だけど、そこら辺全然平気な人からすると意外とそんな良いって訳でもないようで。
それでもこの短時間でここまでテンションでゴリ押し出来るPOVホラーは貴重だと思いますし、同ジャンルの作品の中でも特に好きな一作です。


余談ですが、大学生の頃にこれまた友達から電話きて「今から彼氏と映画借りて観るんだけどオススメある?ホラーでもいいよ」と聞かれたので、まぁホラーで良いならと今作を勧めてみました。
が、その日の夜に「彼氏がビビり過ぎて泣き出したから観るの止めた」と連絡が来たのでちょっと申し訳ない気持ちになりました。
「あのババア出てくる所くらいまでかな?」と気になって後日どこまで観れたのか聞いたら、「メニュー画面」までだったらしくて絶句しました。何故ホラーで良いと言ったのか。