Yoshishun

殺人鬼から逃げる夜のYoshishunのレビュー・感想・評価

殺人鬼から逃げる夜(2020年製作の映画)
3.8
澄まし顔したイケメン殺人鬼が、
いつまでも、
どこまでも、
しつこくも、
追い掛けて、追い掛けて、追い掛けてくる!!!
殺人鬼から逃げる一夜を描いた韓国産サイレントスリラー。

この手の作品は少なからず細かな粗が見つかりがちで本作もその例に漏れない。警察がどいつもこいつも足手まといで大事な時に現れない、衣服だけ着替えて顔はそのままなのについさっきまで追い掛けられていた男の顔は忘れるし(帽子とマスクだけでは隠し切れないイケメンなのに)、夜中に全員体力が有り余る程にずっと走っているのに近所の人が全く外に出てこないなど。更に言えば、男の素性や過去も完全排除している関係で、最期の姿はどこか不憫にも思えてしまう。

しかし、ほぼ走り回り、叫びまくり、緊張感の持続する暗闇の鬼ごっこで全編食いつなぐという荒業で成立させる清々しさ。何よりチン・ギジュによるチャーミングな仕草、特に冒頭のクレーマーや呑み会での痛烈な手話からもわかる程に、聴覚障害というハンディキャップを患いながらも自己主張のできる気の強い女性として描かれる。明らかに自身が不利な極限状況で自分を盾に怪我人を救い出す姿はまさに正統派なヒロイズムといえる。設定ありきのようでいて、キャラクターもしっかり描く姿勢には好感が持てる。正直交番にいた酔っ払いはただの害悪でしかなかったが。

韓国スリラーならではのパワフルな展開と、嘘のようにハッピー過ぎるエンディングで、104分という尺でサクッと堪能できる良質な作品。
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