お父さんが娘のエマニュエルのことを「マニュ」と呼ぶ呼び方がかわいらしい。
すべてうまくいったのだろうか。請負人にとってはそうに違いないし、お父さんもそう思っていただろうけれど、娘たちにとってはそんなふうにはとても思えないのではなかろうか。
最後にどんでん返しがあるのではないかとやはり期待してしまった。警察に呼ばれたり、救急車のスタッフに、そんなの聞いてないよ、人生は美しいよ、と止められたり。
お父さん自身も、孫の出る音楽会のために延期したり、レストランで娘夫婦と食事を楽しんだり、時には笑顔も見えて、人生を楽しんでいるようにも見えたのに。
それでも、やりたいことを全部やって、自分の思う通りにできて、彼自身は満足だったかもしれない。こんなふうに人生を閉じられたらいいかもしれないと思わないでもない。まあ、お金も時間もある人限定だろうけれど。
それでも、人は一人で死ぬわけではなくて、たとえ本人がそれで良くても、後に残される家族ににとってはつらいこと。
ソフィ・マルソー(青い服がお似合い)とジェラルディン・ペイラス(最後にメガネを外すまで彼女と分からなかった)の姉妹の演技がすばらしかった。頑固でわがままな父親に振り回されて、迷ったり悩んだりして、時には憤激して席を立って、それでも最後には彼の希望を受け入れてゆく。救急車で姉妹一人ずつ最後の別れを告げるところ、エマニュエルが身に纏っていたスカーフを外して父に巻き付けるところ、じんわりきた。