イスケ

レッド・ロケットのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

クズも突き抜ければ清々しいのは、様々な作品を通して解っていたことだけど、マイキーは本当に最高だったな。

工場地帯の素晴らしい景観を背景に、世界の主役感を醸し出しての「サプラ〜イズ」。マジで腹立つw

ポルノのアカデミー賞にノミネート。
あれも途中でボロが出てたけど、そもそもがかなり盛ってますねw
「受賞」じゃなくて「ノミネート」と言っときゃ大丈夫だろうという小賢しさも憎たらしい。

本当の取り柄はセックスが巧いことぐらいしか無さそうなのに、シアリスみたいなものを飲んでる悲しさとか、最初にストロベリーに声かけた時のドーナツの例え話とか、まぁいちいちジワジワくる。


でも、あれだけ底辺で暮らしていて、人間性にも問題あるマイキーから、何故か元気を貰った自分がいたんだよねw

確かに彼は負け犬人生なのだろうけど、ちゃんと「生きてる!」という感じがする。
あのバイタリティや正直に感情を表現できる姿が、眩しく見えたのかもしれない。


クズっぷりの最たるところは、隣人ロニーが逮捕され、自分は無事に逃げ切れたことが分かった瞬間のガッツポーズだったわけだけど、あれだけ素直にガッツポーズできれば気持ちいいすよw

同じ状況になったら、申し訳なさは感じるものの、助かったことの嬉しさの方が勝つもんなぁ。
それを表に出すか建前を発動するかの差であって、マイキーの気持ちが分かる人は意外に多いんじゃないかしら。
(申し訳なさすら感じてなさそうなところがマイキーの面白さ)



ショーン・ベイカー監督のインタビューも読みました。

「我々がいかに資本主義社会で生きているかということで、平均的な人々は大企業の陰に生きているのだということ。」

「自分が掘り下げ探求しているテーマは、搾取や人間の未熟さ」

そのあたりが一つのテーマとして監督の中にあるようで、そのダークな部分をユーモアで包んでるがゆえ、ある種の人間讃歌的な趣きがあるんだろうな。



無音のエンドロールを眺めながら作品を振り返っていて、
モラトリアムを脱することのできない(というか脱する気もない)未熟な大人の話とも取れるんじゃないかと考えた。

ラストシーンでストロベリーが水着で登場するシーン。
ここで急にリアリティを踏み外した感じがして引っかかったのですよ。妙に嘘っぽい画というか寓話的というか。

でも振り返ってみれば、ストロベリーと仲良くなっていく過程って、ご都合主義では済まないぐらいに、マイキーの思うがままに進んできた。あまりにも出来すぎてる。

いつまでも、現実から目を背けてありもしない夢を追いかけてる人っているじゃないですか。
つまるところ、ストロベリーのことに関しては、半分は虚構で出来上がってることなんじゃないかと。
それを観客に分からせるために、最後にあからさまに嘘くさいストロベリーの水着のカットがオチとして挿入されたような気がしました。


ロニーが退役軍人のフリをしていた時、帰りの車の中でマイキーが割と本気で怒るんですよね。

あれは、嘘をついていた彼を通して、自分を見ているような気分になったんでしょう。いわゆる同族嫌悪。

「存在しない現実を作ってしまう」という行為が、この作品においてキーになっていたんじゃないかな。


でも、そんなマイキーやロニーのことすら、この作品は包み込んでいた。

面白かっただけではなく、映像が抜群に良かった!
夜の工場地帯見学したいし、自転車でプラプラしたいねー。
イスケ

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