三樹夫

レッド・ロケットの三樹夫のレビュー・感想・評価

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
4.1
元ポルノ俳優が落ちぶれて無一文で地元テキサスに帰ってきて、別居中の妻の実家に転がり込み第二の人生を歩みだすというクズ男の日常みたいな作品。テキサスの『バッファロー'66』や、テキサスの『キッズ・リターン』感のある、ある種青春映画のようになっている。第二の人生といっても悪い意味で「まだ始まっちゃいねぇよ」という感じがある、クズ男の青春映画になっている。
一言にクズと言ってもクズには色々な種類があり、主人公はどういうタイプのクズかというと、とにかくバカ。ほんとにバカ。そしてノンデリカシーで自己中で見栄っ張りで意志薄弱でだらしなく保身的というタイプのクズ。マジでこいつ自分の話しかしねぇなというのと、それやっちゃダメだろというのをその場その場で後先考えずにやるし、終盤に行くにつれマジでこいつクズだなとなっていく。過去の自慢話も多い。何気にトランプ支持者だが、主人公はトランプ支持して何か得があるのか。大きい政府の民主党を支持した方が得だと思うが、精神的に勝ち組でいるような幻想を持てるんだろうな。主人公は真面目にコツコツやるのが出来ない上に細かいところまで有言不実行なのでクズ度が高く感じる。かといって一発大きくドカンと事を成すという才覚もない。

主人公は無一文で地元テキサスに戻り、一応就活をするがどこも断られる。マリファナを売って小銭を稼ぎ、ドーナツ屋に行ったら可愛い子がいて、もうすぐ18歳の未成年を自分のステータスを偽りナンパ。つーか未成年をナンパしてんじゃねぇよ。ナンパの仕方もキモかったし(ナンパなんて大概キモいけど)。そしてこいつをポルノ女優にして芸能事務所を作り大儲けだぜと、徹頭徹尾クズな主人公。ラストは観客に委ねられる形であるが、“スーツケース・ピンプ(女優のポン引きのヒモ野郎)”とまさに主人公をそのまま表すフレーズを妻に言われたことで、初めて自分のクズさに多少なりとも向き合ったようにも見える。

主人公は基本的に自転車移動で、夕暮れや夜のテキサスを自転車で走る様がすごい青春映画っぽい。ロケーションも良くマジックアワーでの撮影もあり、どうしようもないクズが主人公ながら画が綺麗で、クズの青春映画感が高まる。テキサスの片隅で、現実にこういう日常があるんだろうなと思える作品になっている。
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