劇場予告にて、観ようと思っていた映画。
起きてしまった無差別銃乱射事件。
ボート・アーサー事件。
その単独犯であるニトラムの半生を、じりじりと描く。
以下、ネタバレを含みます。
ニトラムはニトラムから脱したかった。
なりたい自分がいた。でも、自分じゃない自分が成りたい方向を妨げる。
だから、ここに、こうしているしかできなかった。
彼は内省を繰り返し、環境の変化に耐えようとする。映画内で流れる不穏な音とBGM。蜂の羽音や車のクラクション、飛び交う花火。
これらの音は、彼の心情とリンクし、ぐにゃぐにゃと揺れ動く葛藤を示す。
なりたい自分になれないなんて、絶望的な日々を過ごす彼の痛さと苦しさが画面から十二分に伝わってくる。
だから、それが赦しになる訳ではないと分かっているが、「普通」からはみ出さずに生きている人が、ただの残酷な事件だと片付けるべきではないと思った。
思いやりがあって、たくましくて、面白い人物だと、ヘレンは言った。
それは、一つの大切な事実だったはずだ。