きゅうげん

ニトラム/NITRAMのきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

オーストラリアのタスマニア島で起こった銃乱射事件。その犯人がなぜ犯行に至ったかを描く、切なく悲しいドラマです。

つっけんどんだけど気にかけてくれる母、優しく真摯だけど小市民的な父、自由を尊重してくれる不思議な友人など、距離感は不確かなものの環境が劣悪というわけでもなく、しかしズルズルと最悪の方向へ進んでいってしまい……。
子供との花火や葬式での服装は、彼なりの実直で真摯な心遣いだったんでしょうね。
犯行理由としてのパーソナルな問題もさることながら、煽情的なワイドショーに当てられてしまったり、銃の売買の粗雑な実態であったり、いろいろな積み重ねの上に起こってしまったことがよく分かります。
父とふざけあったカフェや、父が購入しようとしてた民家が惨劇の舞台となってしまったのは、なかなかツラいものがありました……。

抑制的な撮影や演出などはもちろん、回転数のおかしいレコードや上手にならなかったピアノ、ノリノリだけど下手な歌など、外れている音の使い方が物悲しく印象的でした。
また『ゲット・アウト』での怪演が思い出深いケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、テキサス人なのにオーストラリア訛りが完璧でビックリ。
今後が見逃せない俳優の一人です。

ちなみに実際のニトラムは、高級車を30台も所有し農園も購入、海外旅行は14カ国に渡るなど、映画以上に派手で俗っぽい生活をしてたみたいですね。
それで深夜徘徊しながら観光客にエアガン撃ってたとか……。