Nova

ニトラム/NITRAMのNovaのネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

 とにかく、全てがいびつで、バラバラ。恐ろしくなるくらい。

 マーティンは必死に生きているつもり、他人の為に頑張っているつもりだけど、それがいつまでも空回りしている。マーティンからしたら、裏切られてる気分で、「なんで?」の連続なんだろうな。

 基本的には思いやりがあって、ユーモラスな人だけど、幼少期の経験からか、見えている視野が非常に狭くなっている。オーストラリアの田舎、という土地柄も関係してるのかな。

 サーファー(というよりジェイミー?)への強い憧れとか、お金だけ持って土地を買いに行ってしまうシーンとか、気持ちだけ先走って行動してしまう場面が、自分を見ているようで、観ていて胸が痛くなる。

 勝手な予想だけど、昨今の日本で相次いでる「誰でもよかった」「死刑になりたかった」って人たちも、彼に近い境遇なんじゃないかな。そして彼らと、私は決して遠い存在ではない。いつ私が、彼らのようになってもおかしくはない。

 自分でも段々とおかしくなってるって、気付けないんだろうな。でも、ロサンゼルスは行けてよかったね…。

 理由無き暴力を正当化する意思は全く無いのと、どこまでが史実か考えないといけないことは分かるけれど、この映画を観たら彼に同情してしまう。ジェフリー・ダーマーの映画も、彼が追い込まれてゆく姿が、惨たらしくて見てられなかった。

 最後が無音で終わるのは、映画として素晴らしいエンディングだった。
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