ぽん

ニトラム/NITRAMのぽんのネタバレレビュー・内容・結末

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

実話のようですが、実際の事件についてとか、犯人のマーティン・ブライアントについては何も言いたくないです・・・。あくまでも、この「映画」についての感想を書きます。

主人公のマーティン(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)という子が、なんだか不憫で哀れで。知的障害と精神障害を併せ持ってる感じのキャラクター。皆と同じようになりたいのに出来ない、なんで自分には出来ないんだ・・・って不全感に苦しむ。ポンコツな自分はけっこう共感できてしまって辛かった。

そんなマーティンが、熟年のお金持ちの女性と出会って奇妙な友情で結ばれる。このヘレン(エッシー・デイヴィス)という女性が素敵なんですよね。最初、認知症なのかな?って思ったけど、そうではなさそうで、世捨て人のように生きてて身だしなみだとか家の修繕なんかに気が回らなくなってただけなのね。マーティンと出会ってからはドレス着たりキレイにお化粧したり、ちょっと華やいで。外れ者同士で助け合って暮らして・・・って、やっとマーティンも幸せになれたと思ったのに。ハル・アシュビーの「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」(1971)を思い出した。(そこまでの年の差じゃないけど)

無差別大量殺人なんて狂気に走るのは、何もかもを失った“無敵の人”っていうのがフツーだと思うけど、マーティンの場合、お金はあった。ふんだんに。でも、だからこそ銃を手に入れることが出来てしまったという皮肉。銃を規制したところで人間の欲望や罪性には歯止めが効かないのだ、って言ってる感じのテロップが最後に出てゲッソリ。だとしても、殺人の道具を一般人が簡単に手に入れられる社会なんてどうよ?と思う。

マーティンは、思うように出来ない自分を見ていると、自分の声が届かない他人のように感じる、みたいなことを言ってたのだけど、事件を起こす日の朝、新しい洋服に身を包んで鏡に映る自分にキスをするんですよね。あれは「自分には出来る」って確信と自信を持って、新しく生まれ変わった自分を祝福したって事なんだろうか。そんな自分が愛おしかったのだろうか。

マーティンに言ってやりたい。
人を殺す能力なんてク〇だよ。
ぽん

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