KnightsofOdessa

MEMORIA メモリアのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
4.0
[コロンビア、土地と自然の時間と記憶] 80点

2021年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。前作『光りの墓』以降、監督は軍事政権下のタイでは映画を作らないと公言していており、本作品は確かにコロンビアを舞台としている。主人公はボゴダで入院する妹を見舞う蘭農家の女性ジェシカである。彼女は自分にしか聴こえない爆発音に悩まされており、身の回りでの不思議な現象に巻き込まれていく。爆発音に関して、知り合いのフアンを通して教え子で音響技師の青年エルナンを紹介してもらい、爆発音を再現してもらうことにする。エルナンはジェシカに自分のバンドを紹介したり、蘭保存用冷蔵庫の資金援助を申し出たりとかなりグイグイ来ており、ジェシカも若干引いている。しかし、ある日彼を大学を訪れると、エルナンなんて人はいないと言われてしまう。妹に関して、自分の犬が轢かれてしまい、病院に連れて行った帰りに倒れて入院したことで、犬のことを完全に忘れてしまったと嘆いていたが、退院したら犬のことはすっかり忘れて仕事の話をしているので、なんとも狐につままれたような気分になる。ジェシカが死んだと思っていた人物も妹との会話の中に生存している人物として登場し、時空が歪んだような気にもなる。病院に関して、ジェシカは文化人類学者のツェルキンスキ教授に出会い、トンネル工事の現場で発見された6000年前の少女の遺体を観察する。

これらすべての挿話に、自然や土地の時間と記憶が共通しており、それらを締めくくるように物質から記憶を読み取れるエルナンという中年男性が登場する。物質と記憶や感情の連動といえばソフィア・ボーダノヴィッチを思い出すが、彼女が20分くらいで描いていることを本作品では勿体ぶって140分近く掛けて描いていることになる。途中の挿話も投げっぱなしで散漫な印象を与え、雰囲気は好みだがそこまで印象に残らなかった。一番好きなシーンは、真夜中の駐車場にカメラが近付き、そこにあったすべての車がハザードランプを付けるとこ。ここだけは不可視の怪異が世界に溶け込むような不気味さがあった。
KnightsofOdessa

KnightsofOdessa