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MEMORIA メモリアのkazukiのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
3.5
頭内爆発音症候群というのがある。
寝入る直前や目覚めた直後に短時間の大きな幻聴が発生する状態のことで、本作のアイディアは監督がこの病気に罹った経験が元になったとの事。

朦朧とした主人公が、頭の中で聴こえるドゴォンという音の源を辿っていくストーリー。

余白の多い、開かれた映画なので色んな捉え方が許容されるように思う。
例えば、主人公は穴の空いた頭蓋骨に象徴されるように、ドゴォン音の発症と共に空っぽになってしまった頭を人や場所の記憶で満たしていく。後半でアンテナと形容されるように、他者の記憶を自分のものとして無意識に取り込んでしまうのだ。前半の頭蓋骨と呼応するのが森に掘られるトンネルで(頭蓋骨もここから発掘されたのだった)、森に眠る記憶が頭蓋骨の若く空白になってしまう恐怖も読み取れるし、このトンネルという穴から記憶が噴出し、それを受信してしまうのが主人公とも読める。そう考えると、美術館で主人公が目を止める絵が、天から(或いは宇宙船から)降りてくる光に選ばれた人を俯瞰で描いた物であるのも示唆的に感じられる。

物語的な理解を別にしても面白く、記憶に関する不確定さを感じられるし(主人公の見るものが自分の記憶で無いかもしれないという前提でもう一度見ると、さらにそれを感じられるだろう。)、逆に全てを記憶してしまうというのはどういう事か?という事も考えさせられる。記憶を整理するための夢は見ず、寝るというのはシャットダウンと変わらなくなり、、でも容量は普通の人と同じだから見るものを制御しないといけない? などなど。

また、見えないけど有りそうな“何か”を表現するようなシーンが多く、静かなストーリーながら不思議な緊張感が漂っている。引いた絵で、かつ、主要人物から外れた場所が中央に置かれる絵が多いので、その余白に何かを感じられるのかも知れない。

家で配信やDVDで見るのには集中力が続きにくいだろうし、そもそもされるか分からないので機会が有ればもう一度見たい。


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