ナガエ

エッフェル塔~創造者の愛~のナガエのレビュー・感想・評価

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なかなか面白い映画だった。エッフェル塔にこんな歴史があったとは。

映画の冒頭、なかなか見慣れない表記が出た。

【史実を基に、自由に作った物語】

これを見た時は、「分からない部分は想像で埋めた」ぐらいの話なのかと思ってたんだけど、映画を観終えると、もうちょっと違う意味がありそうだと感じた。映画のラスト、「アドリエンヌ」と表示される場面があるのだけど、そこではある「仮説」が示唆される。そして、その「仮説」が「自由に作った」と言っている部分なんだろうな、と思う。

ただ、映画を観ると、その「仮説」にも一定の説得力があるように感じられた。まあ、そういう風に作ってあるわけだから当然と言えば当然だろうけど、「300mもの巨塔を人力で組み上げる」という凄まじい偉業の陰に、これほど個人的な物語があったのだと考えるのはなかなか面白い。


1889年3月31日、エッフェル塔の除幕式が行われた。物語は、その3年前から始まる。ギュスターヴ・エッフェルは、数々の実績と革新的な工法の開発によって「鉄の魔術師」と呼ばれるほどの名声を獲得していた。橋などの大型建造物の建造に多数携わっていた彼は、次の目標を「地下鉄」に定めていた。同じ頃、パリ市は「パリ万国博覧会」のシンボルモニュメントの制作のコンペ開催を発表しており、エッフェルは周囲から「名声のためにモニュメントを作れ」と言われるが、彼は地下鉄にしか興味が持てなかった。どうにか地下鉄の事業を手掛けるために、旧友で今は記者をやっているアントワーヌと連絡を取った。彼は政財界に顔が利くため、どうにか地下鉄事業をエッフェルにと助言してもらおうと考えたのだ。

久々に会った旧友から妻を紹介されたエッフェルは、衝撃を受ける。アントワーヌの妻アドリエンヌとは、知った仲だったのだ。

20年前、ボルドーで橋の建造に携わっていたエッフェルは、作業中に足場が崩れ、濁流に飲み込まれた作業員を助けるために川へと飛び込んだ。財政の責任者に「もっと木材を寄越せ」と詰め寄っても話を聞いてもらえない。そこで彼は、橋建造の発注者(だと思う)ブルジェスの元へ直談判に行く。ちょうど昼食会が始まる直前だったこともあり、エッフェルは成り行きで優雅な昼食会に招かれることになった。

そこで知り合ったのがアドリエンヌだ。アドリエンヌは、実はエッフェルが作業員を救助している場面を目撃しており、昼食会でのウィットに富んだ会話も相まって彼に惹かれる。誕生会に来てほしいと誘うなど接点を持ち、2人は交際することになる。

しかし、上流階級の娘と一介の技師の関係は、一筋縄ではいかなかった。

20年ぶりにアドリエンヌと再会したエッフェルは、アドリエンヌも同席する食事の席で、「300mの鉄塔を作る」と宣言する。地下鉄は諦め、モニュメントに全力を注ぐという宣言だ。そこからエッフェルの難事業が始まっていく……。

物語は、エッフェルが鉄塔建造の事業に乗り出す決断をし、様々な困難をなぎ倒しながら前進していくパートと、過去のアドリエンヌとの関わりのパートが交錯するような形で描かれていく。難事業をやり遂げようとするエッフェルも、上流階級の出でありながら技師に惹かれたアドリエンヌも、なかなか魅力的に描かれている。

アドリエンヌ役の女優の顔が、強い意志を秘めたような感じで、そういう雰囲気がアドリエンヌという人物の感じに合ってたように思う。しかし、アドリエンヌ(役の女優)に関しては、現在も20年前も見た目がほぼ変わらないので、そこは結構混乱するポイントではある。仮に、20年前に18歳、現在が38歳だとして、そのどちらの年齢にも見えない。エマ・マッキーという女優だそうだが、現在27歳のようなので、まあどっちの年齢に見えなくても当然かという気はする。この映画について「ちょっとなぁ……」というポイントを挙げるとすればここだろう。まあ、メチャクチャ気になるというわけではないけど。

この映画について特段書くことが思いつかないんだけど、壮大な物語にワクワクしたし、2人の恋物語もなかなか魅力的だった。ざっと調べてみると、「史実を基に」というほど「史実」は残っていないようなので、かなり創作で出来上がっている物語っぽいけど、だからこそ魅力的とも言えるかもしれない。なかなか面白い作品だった。

しかしホント、建造中のシーンは圧巻だった。よくもまあ、こんなものを人力で作ろうと思ったものだ。東京タワーも確か結構な人力で作ってるはずだけど、東京タワーは1958年建造だから、エッフェル塔はそれより60年も前なんだもんなぁ。驚き。

あと、なんとなく知ってはいたけど、エッフェル塔建造中は「パリの汚点」などと批判が絶えなかったそうで、銀行も支援してくれない中でよく作ったもんだと思う。
ナガエ

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