80年代後半、日本映画もバブルの恩恵で大量の金が余っていたのでこの作品のように一流スタッフをかき集めてお手軽に大作が作れる時代があった。でもバブルなんでもっと時代にあったノリのいい作品を見に行っているので、そうした映画は大抵はお客の心にも残らないし映画ファンの心に引っ掛からずバブルの遺産としてコンテンツの底に沈没することに。
それでも本作を鑑賞したのは内容はさておき幼い頃衝撃を受けた内田裕也の演技を再確認したかったからで、それは大人になっても変わっていなかった。華やかな横浜の娼婦館で繰り広げられる殺人事件といういかにもなミステリーの重要人物になぜこの手の作品に必要なお芝居の技巧を持たないおっさんを起用したのかは謎だけど、そんな映画に生半可な演技を拒みあくまで自分なりのやり方を貫く裕也にはロック精神を感じてしまい島田陽子ならずとも魅了されるわなと思った。
でも他にも自己主張しまくる木村大作のカメラワーク、聞き応えがありすぎる池辺晋一郎のスコア、原作では娼館で下働きとして雇われた工藤夕貴が主人公だったのに無理矢理島田陽子に変更するし時代設定も戦争真っ只中に変えるわで内容がボロボロになっている脚本など暴れまわるスタッフのコントロールを監督が取れないまま暴走している印象で、内田裕也が居なくても観客の心を掴まない作品になっていただろうな。それに止めをさすのが島田陽子の必死になって裸になって大声出してますという痛々しい体当たり演技…別に要らないっちゃ要らない。
あと江波杏子の顔面騎乗はセクハラやパワハラで訴えても良かったのでは。
それでも粟津號の100点の推理劇演技と中尾彬の風呂に浸かった死体演技が素晴らしいのでプラス0.5点。
