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春原さんのうたのmarutabatsuoのレビュー・感想・評価

春原さんのうた(2021年製作の映画)
4.3
川沿いのゆるやかなカフェで働く女性の穏やかな日常。けれどふとした瞬間に忍び寄る影。余白で構成された映画ゆえ、途中まで何が起こっているのかわからなかった。

やがて何かの事態が浮かびはじめ、大きな喪失感を抱えていることが浮かび出す。そこからの展開もドラマチックに振るわけではない。ただ寄り添ってくれる人々とお茶をしながら「ありがと」「おいしいね」を重ねる。ただそれだけなのにとても尊く心がとけてゆくのだ。

あまりにも自然な台詞と演技は役者の力もあるだろうが、何よりどうやっているのかさっぱり分からないが撮影のメソッドだろう。「あ、えっと、やっぱりアイスコーヒーにしてもいいですか?」の台詞、カメラ前を当然のように横切る通行人……、なんだこれは。この映画にはちょっとした奇跡が映っている。