ゆき

春原さんのうたのゆきのレビュー・感想・評価

春原さんのうた(2021年製作の映画)
4.0
風通し

喪失からの歩みはじわじわと進むもの、そう言わんばかりにゆったりと時間が刻まれる一作。
にじみ出る日常感。日常音と一緒に、会話がこぼれおちる様に聞こえてくる。
穏やかな土地柄も相まって、押しつけがましくない優しさが沁みる。
親族だったり同僚、旧友と彼女に寄り添う人がいる安堵感。
時折マスクを外した時に、ようやく出会えた感もある。
大きなどら焼きを一人で食べきれる頃には、決別と一味違う節目が待っているのかも。
東直子さんの短歌集も好きですが、今作の温度感と丁寧さも好みだった。
祖母が暮らしていた「滝川」という土地名におっ!と思っていたら、主演の荒木知佳さんが滝川ご出身とのこと。
帰り道はいつもよりゆっくり自転車を走らせた。自分を構成してくれている土地と人に想いを馳せながら。
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美術館の仕事を辞め、カフェのアルバイトを始めた沙知。常連客が住んでいたアパートを譲りうけ、会うことのできなくなった存在への想いを胸に新たな生活を大事に過ごしていく。
ゆき

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