佐藤でした

戦場のピアニストの佐藤でしたのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.0
ノンフィクション小説を原作に、ナチスのホロコーストを生き抜いた実在のユダヤ系ピアニスト・シュピルマンの半生を描く。

幼少時をゲットーで過ごし、母親を収容所で亡くした経験を持つロマン・ポランスキー監督自身の原体験に回帰した一作。


少し前の時代に刻まれた悲しい歴史。戦争という時間の狂気。人を人が裁き、痛めつけ、分類し、閉じ込め、最後には皆殺しにする。そしてまるごと一つ、街を焼いた。どうしてそんなことが許され実行されたのか。あまりにも人間は愚かで、むごいことができる動物だ。

丸焦げの街に響きわたる力強い旋律が、ポランスキー監督の叫びに聞こえた。こんなこと二度とあってはならない!と。

描写には目を覆いたくなるような場面がいくつもある。ポランスキー監督が実際には殺人罪に処されていないのだから「そうなのでしょうね」と納得するしかないようなリアリズムでもって強烈に語りかけてくる。決して目を背けてはならない。

主演は、この作品でオスカー俳優となったエイドリアン・ブロディ。
体重を落としながらの、ピアノ演奏猛特訓という努力がちゃんと画面に表れての、納得の受賞だったことでしょう。

‥ピアニストのこころに灯った火は、完全には消されることはなかった。死んでしまった方がよっぽど幸せだと思える状況下でも。
どうしても彼は生きねばならなかった。死んでいった人たちの分まで。たぶんわたしたちも。
佐藤でした

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