ワンコ

攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争のワンコのレビュー・感想・評価

4.0
【苦悩するゴースト/戦争は平和・自由は屈従】

自由には様々なルールや制約があって、思考能力の劣った民族主義者や、凝り固まった思想家、原理主義の宗教家などにはかえって不自由なのかもしれない。

攻殻機動隊の物語のストーリーにも苦悩がうかがえる気がする。

持続可能性(サステナビリティ)は本来、”戦争”の修飾語にはならない類の言葉だと思う。
これにつづく「最後の人間」で、この伏線に解が与えられると思うが、この「持続可能戦争」は、今思いつく社会課題を盛り込み過ぎじゃないのかと考えたりする。

また、ジョージ・オーウェルの「1984」の一節「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」が作中で引用されるが、もともとの翻訳である”隷従”の方が、”(家臣或いは家来のように)付き従う”ということで「1984」にはピッタリで、屈従は「屈して従う」とは少しニュアンスが異なるような気がする。

ただ、物語に沿って深読みして、現在の自由には様々な熟慮や配慮、制約が必要で、これに従うことは「屈従」だと考える連中がいるといことで読み替えたのだとしたら、それを物語にちょいと盛り込む方が、ストーリーに深みが出たような気がする。

僕の知っている父権主義者でネトウヨのおっさんは、イギリスがEUから離脱を決め、トランプが米大統領に当選した時に、「新しい世界が来る」とうきうきしていた。だが、イギリスはEUから離脱したことで労働者不足になったり経済に一定の悪影響が出て、EUとの協調体制は維持し、アメリカはバイデン政権に代わって、予断は許さないものの、ポピュリズムに抵抗する勢力も大きいことが明らかになった。

誹謗中傷渦巻くネット社会でも、訴訟などが増えていて、バカなネット民の好き勝手な言説には公共の福祉を考えたうえでの制限がかかるようになってきているが、ウクライナやイスラエル・ガザ地区での戦争・戦闘を見ると、決して、戦争は平和ではないし、誹謗中傷を繰り返すネトウヨやネット民にとって”無知は力”でも、世界にとって無知は決して力足りえないことは明らかだ。

「1984」は「戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり」という一節を通じて、逆説としてもメッセージを伝えようとしているのだ。
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