紺野薫

ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。の紺野薫のレビュー・感想・評価

4.0
ドラマみたいなドキュメンタリーだった。
それは別に「作り物のようだ」といった意味ではなく、むしろ逆で小説家や演出家ですら考えつかないであろう展開の連続だった。
ドキュメンタリーってヒトの内面や生活環境をありのまま見せるモノではあるが、この映画は、なんというか生々しい。(ものすごく褒めてる)

「電話や手紙でしか連絡が取れない」という環境は、令和の私たちはあまりピンとこない。国を隔てて生活してる2名にとっては、手紙と電話が主な通信手段となる。
手紙と電話が、こんなに重い時代があったんだな。

前半は、手紙と電話を介しての恵子さんと愛子さんの関係性が描かれる。
「伝えたい」「話したい」という思いが一方通行な場合、その重さは更に増す。重い手紙、重い電話。

後半では、いざ北朝鮮へ。
北朝鮮の街並みは、何故か白っぽい。
北朝鮮へはジャーナリストと当局の方が同行していて、映像として撮るのも色々規制があるようだった。

そして恵子さんと愛子さんが面会·····
さすがにここでは泣いてしまった。
愛子さんの乗った車が施設に現れ、愛子さんの車椅子が降ろされ·····というところから描いている。生々しい(いい意味で)
それまで気丈だった恵子さんが一気に涙を堪え、そして泣き崩れるまでの映像がすごかった。年数の厚み、重み。

そこから愛子さんの親戚と交流を深めていくけど、なんというか日本に関わることになると「言えない」ことがあるんだろうな。壁を感じてしまった。
互いの国の歌を歌う時、愛子さんの親戚が当に関する歌しか歌ってなかったが印象に残った。やはり·····言えないこと、やってはいけないことが多いんだなぁ。

帰国してからも手紙のやりとりがあり、そこで明かされる「恵子」さんの名付け親が愛子さんという話。
なんで再会したときに言わなかったんだろ。·····いや、きっと言えなかったんだろうな。

そして最後のテロップ·····
北朝鮮はコロナを理由として、国際郵便の受付も取りやめてしまった。

先日、北朝鮮は飛翔体を撃った。
これを見て、恵子さんは何を思ったのだろう。
紺野薫

紺野薫