世間一般には「女児誘拐事件」として知られる加害者と被害者の真実。
加害者である文(松坂桃李)は、世間から「ロリコン」「変態」というレッテルを貼られ、名前を変えひっそりと暮らしていた。
一方被害者である更紗(広瀬すず)は、周りから「可哀想な子」というレッテルを貼られ、同情の目で見られていた。
大衆の善意ほど当人にとって迷惑なものはない。
大衆は自分の見たいように事実を解釈し、社会の枠組みの中に閉じ込めようとする。
二人の間にあった「名づけ得ぬ感情」は無視して。
それは恋愛とも共依存とも言えない関係性だ。
誰からも「所有物」として扱われてきた更紗に対し、文は「更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない」と力強い言葉を放つ。
文だけがありのままの自分を肯定してくれた。
更紗はそう感じたはずだ。
全体として良作だが、アンティークショップの店主の存在が浮いていたことと、最後のオチがテーマと合わないことが気になった。