映画好きの柴犬

流浪の月の映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
3.9
ただそばにいたいだけなのに

 家に帰りたくない少女・更紗(白鳥玉季)を世話したことで誘拐犯とされてしまった青年・文(松坂桃李)。15年後、成長した更紗(広瀬すず)が文と再会したことで、再び衆目に晒されることになる。

 李相日監督の長編は広瀬すずも出ていた「怒り」以来、意外と久しぶり。多様性とかダイバーシティとかが叫ばれる世の中でも、悪意なくとも自分とは異質なものを嫌悪してしまい、レッテルを貼ることで安心しようとするのが人間の本質。映画だから主人公二人に感情移入できるけれど、現実に出会ったらやっぱり嫌悪してしまうだろうな。そんな、自分の中のダークサイドを嫌でも意識させられて、不穏感と焦燥感に胸を締め付けられる重い作品。

 作品の雰囲気や演出は申し分ないが、文の生い立ちとかに若干説明不足を感じた。横浜流星のDV男・亮のクズっぷりの中に垣間見える自分に対するどうしようもなさの演技が見事。