薔薇の葬列やドグラマグラなどで知られる松本俊夫の短編映画。般若のお面を被った人の周囲を永遠と回り続ける話。

凄まじいインパクトを持った実験映画でした。色即是空もそうでしたが、ギャスパーノエを軽く飛び越えるほどのフィルムの切り替わりが行われるため、トリップムービーとして今作は抜群の存在感を放っていたと思います。基本的には11分間同じことを繰り返されるだけだけど、その一方で1カット1カットがとても美しくて、かなり記憶に残りました。もしかしたら前述したギャスパーノエとかニコラスウィンディングレフンの目指しているところは、今作のような作品なのかもしれません。個人的には今作が少しでもストーリー性を持っていたら大傑作になったのでないかとも思いました。

仮面と髪の隙間から覗かせる微かな身体の露出に、官能を喚起させられる。

　視覚暴力映像としてトニー・コンラッドの「The Flicker」に近い点滅現象があるが、こちらには対象がある。被写体があることで我々の目はそこに集中するにも関わらず、その暴力表現を掻い潜らなければ鑑賞できないのである。近影から徐々に離れた位置へとカメラ位置を変え撮影されたカットが連なり、被写体の周りを周回する。

　般若の面をした女性という不思議な被写体を、しっかり認識することは難しいのだが、不意の静止で覗かせる首元とかが妙な色気をも持つ。逆に最後に般若の正面カットで幕切れする威圧感もある。