羊の群れは丘を登る

ブリュノ・レダル、ある殺人者の告白の羊の群れは丘を登るのレビュー・感想・評価

3.7
 1905年9月1日、フランスのカンタル地方で、神学生の17歳の青年ブリュノ・レダルが12歳の少年を殺害。
 逮捕後、精神鑑定医の指示で書いた彼の回顧録の映画。

 ブリュノと家族との思い出話が一切ない。家庭はあるけど、収容所みたい。

 羊飼いから性暴力を受けたことが一因か、早熟な性的な目覚めが起きた。
孤独やフラストレーションの捌け口として極端な自慰行為に依存する。
 
 農民としての階級格差からか、知的、容姿が良い、階級の良い人間への嫉妬が殺意を生んでいる。
 自殺も選択肢にあったが、聖書の歪んだ解釈で自殺はダメで、殺人ならか赦されると認識。

 殺人描写がかなり詳細に描かれている。
少年の首を掻き切るところとか、生首のドアップは目を逸らしたくなるほどで、特に気分が悪かった。
 首を掻き切るのは家畜の屠殺を見てきた影響かな?

 ブリュノは少年の生首を手にした時、人を殺した実感が沸き始めたのか、恐怖に慄いていた。
 その恐怖も罪悪感ではなく、生身の人間と接触することで生命を実感した怖れなのかなと感じた。

 「なりたい自分」と「どう足掻いてもなれない自分」の狭間で揺れ動いている。
→疎外感とフラストレーションの要因
 感情移入が皆無で、承認欲求を満たすこと。
→自慰行為や暴力行為のエスカレーション

 殺人をしなければならない直接的な動機は分からなかったし、殺せれば誰でもよかったという感じなのかな。
 観ていて気持ち悪かったが、直視しないといけない事実で観る価値はあったかな。