5歳の女の子・洋子は、お父さんとの散歩の途中で、廃屋になった洋館を見つける。ある日二人が通りかかると、洋館は綺麗になっていて、花の咲き乱れる美しい庭ができていた。ひとりのおばあさんが、引っ越してきたのだ。洋子は、口のうるさいおばあさんを、怖いと思いながらも、どんどんと惹かれていく。やがて洋子はジフテリアにかかり、病院で過ごすことになる。ある夜、一人の少女に導かれ、そのおばあさんの不思議な記憶の世界をのぞくことになる。5歳の洋子と70歳のおばあさんの記憶とが重なり合う。洋子はおばあさんの時間の中で、夢とも現実ともつかない冒険をすることになったのだった…。幼い洋子の見た70歳のおばあさんの記憶。そこには強情な少女と少年の愛の歴史と、切ない死の結末があった。そして13歳に成長した洋子は、あのときの体験を不思議に思い、おばあさんに会いに洋館へ向かう。そこで洋子は、おばあさんからすべての謎を聞くことになる。洋子は、70歳のおばあさんの中には、7歳も、14歳も、70歳も、生きてきたすべての時間を持っていることを知る。歳の違う洋子とおばあさんだったが、二人は同じ気持ちを共有することができたのだった。幼い洋子と、歳をとったおばあさんとの無垢な気持ちが、世代を超えて心の扉を開ける、多くの人々を感動させるファンタジー。
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