やまもとしょういち

i aiのやまもとしょういちのレビュー・感想・評価

i ai(2022年製作の映画)
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「意味わからん」「よーわからん」「ワケわからん」

はちゃめちゃで一見無軌道に生きていったバンドマン、ヒー兄(森山未來)を理性で捉えることは難しい。ついでにいうと、そもそも音楽も本当はよくわからないものだと思う。ヒー兄は音楽のようだ。そしてこの映画も音楽のようだった。

一度見ただけでは消化しきれない詩情、メッセージ、表現に満ちた作品で、ヒー兄との物語という中心からはみ出した1シーン、1シーンに歌が宿っているような、マヒトゥ・ザ・ピーポーの音楽観そのものの映像化をしたような映画だと思う。人生には筋書きのないように、この映画とその物語もよく整理されたものでもないし、都合のいいハッピーエンドに中指を立ててすらいる。だが、ぎりぎり映画という体裁を保っている。ここをよしとするか、それとも作品を通じて何か別のものを見出そうとするかで、観客の評価は分かれていくように思う。そして当然、本作は観客一人ひとりが能動的に何かを見出そうとすることを望んでいる。