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宇宙人の画家のkazukiのレビュー・感想・評価

宇宙人の画家(2021年製作の映画)
3.7
表現に触れるのが楽しい映画でした!

深淵な雰囲気もあれば冷戦期の破茶滅茶スパイもののような楽しさもあり、内面照射的な青春映画ぽい部分もある。

【この色褪せた現実でシコシコ夢想しているような事が, いつか色彩を持って世界を変える力になるかも知れない。】

本作で描かれる現実は白黒でセリフは棒読み, 虚無が蔓延している。そんな虚無の中で ホウスケ の妄想には色彩とリアルがある。(荒唐無稽な話なのにも関わらず) ※後藤護さんがカラーから白黒へというのはオズの魔法使いの逆パターンですねと指摘されており,確かにと思いました。

面白いのは、現実とホウスケの想像世界が完全な一対一では無く散らばっている事(例えばホウスケは想像界では誰に当たるのか? 複数の考え方が出来る)と、宇宙人の絵やマルヤマ(これが画家なのかは不明)がこの両世界を横断し 互いに混じりあっていく事だ。ホウスケの想像は具現化し現実に影響を与え始めてしまう。この絵やマルヤマは『テオレマ』などで描かれる来訪者のようでもあり(テオレマもダルマも定理という意味)、定理に従ってヒトモノを変態されるのだ。

冒頭、宇宙人の絵で覚醒したラッパーは虚無ダルマとなり 片や ホウスケは 絵を見て預言者として覚醒する。(擬似エンドが入るのはこの辺りだったかな? もう一度見ないと..) ホウスケはマルヤマに導かれ絵を見る事になる。

監督は手塚フリークで、『ドオベルマン』が本作の下敷きにあるとの事。 また、そうすけ と けい(K)については「異なる種類の芸術家を描きたかった」と話していました。Kや虚無ダルマは大衆の心を掴むのが上手く、自らの創作で人を操る, 彼らのエゴの中で暮らすような感覚に阻害を覚えるそうすけは1人でシコシコ夢想するタイプ。

あの大仏がファルスとしたらラストは射精エンドと言えるかも知れない。虚無の果てに放たれた光は解放と大量虐殺/罪悪感を齎す。

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