ももいろりんご

最後の決闘裁判のももいろりんごのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
「後継ぎ、後継ぎ」って、うるせーよ!
女は子を産む道具じゃないってーの!
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=STORY= ※公式ホームページより
中世フランス。騎士の妻マルグリットが、夫の旧友に乱暴されたと訴えるが、彼は無実を主張し、目撃者もいない。 真実の行方は、夫と被告による生死を賭けた“決闘裁判”に委ねられる。それは、神による絶対的な裁き── 勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者はたとえ決闘で命拾いしても罪人として死罪になる。そして、もしも夫が負ければ、マルグリットまでもが偽証の罪で火あぶりの刑を受けるのだ。 果たして、裁かれるべきは誰なのか?
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14世紀のヨーロッパを甘く見てました。
フランス王はシャルル6世。百年戦争時代。日本では足利時代。世の中の常識が違うのだから、怒っても仕方ないんだけど、腹が立つわ。
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物語は同じ時系列で起こった出来事を、3人の目で語られる3部構成で進みます
・夫(ジャン・ド・カルージュ)の証言
・友人(ル・グリ)の証言
・妻(マルグリット)の証言
マット・デイモン演じるジャンは、祖父の代から役職を持ち、実直な熱血漢だが、脳みそ筋肉系。妻にも不器用だけど優しいのかと思えば、ただの男尊女卑ヤロウにも見える二面性。
アダム・ドライバーのル・グリは、身分のない分、努力家で聖職者を目指していたため学がある。ピエール伯に重用され、ジャンを押しのけ出世。次第に地位と権力で自分に酔っていく勘違いヤロウ。
人間は記憶を美化していくものだけど、男たちの証言は、本当にソレ。最後のマルグリットが語る証言で、如何に男たちが一方だけの側面で話をしているのかがわかる。
そんな構成に、自然と唸る。うん。
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14世紀のフランスでは、石の重厚な城砦に住む騎士様たちに対し、庶民は掘っ立て小屋で煮炊きは外でやっているような画もあり、想像より全時代的。当時の戦いは、歩兵は槍や斧で突っ込み泥だらけ。騎士様の甲冑は本当に重そう…そして、馬に乗り、槍(ランス)、盾、剣、斧…泥まみれ。決闘に負ければ、市中引き回しの上、さらし首ならぬ逆さ吊り。こういう人間の残虐さも東西変わらんのね。
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1386年12月28日。決闘の日。
その勝者が真実となる。(史実であり、当時はそう信じられていたって理解してるつもりでも、はぁ?となる私。)本当にそんな馬鹿な…ですが、彼らは大真面目。真実には神が味方してくれるとは。(はぁ?)←しつこい
無知って恐ろしい。
14世紀と今の違いは、私が、知っているかどうか、だ。男と女は違うけれど、同じ人間で、命であること。得意不得意や役割はあれど、優劣などないこと。
女が夫婦の営みでカンジないと子どもは授かれないんだって。強姦では妊娠しないんだって。そんな言葉を神父が真顔で説くんだから…一方的なセックスや言葉に傷つき、自分が悪いのかもと、自分を殺して生きてたきた女の人生を思う。
更に、レイプされたと世の中に明かされるケースは氷山の一角で、その審理中もさまざまな誹謗中傷に晒される。マルグリットのその姿は、現代女性の姿と変わらず、性被害の実証の難しさは、今に通じている。教育が普及し、知識や常識のレベルが変わっても、残る根底の汚泥。差別と刷り込み。
なんかねー…怒りとともに、落ち込みました。
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さて、気持ちを切り替え!
決闘シーンは大迫力の名シーンです!スクリーン、オススメ!残酷だしまぁグロいし、暴力NGの方はご注意を。
ジョディ・カマーのあの美しく強い生き方。マット・デイモンとアダム・ドライバーの競演。ベン・アフレックの上品でいやらしい笑顔。やばそうなシャルル6世(笑)。久しぶりに見た気がする中世の世界描写にやられた、そんな映画でした。