ももいろりんご

ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーのももいろりんごのレビュー・感想・評価

4.2
めちゃめちゃおもしろかった!
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brainwash とは洗脳。
Male Gaze=“男性のまなざし”という、映画の中で女性が男性の欲望対象として描かれる視覚メディアの権力構造についてのドキュメンタリー。
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世の中の多くの仕組み(システム)は男性によってつくられている。男性の視点で設計、デザインされている。そんなことわかっているよ、と思っていたけれど、全然わかっていなかった。
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正直、今後、映画をどう観たらいいのだろうとさえ思った。同じ日に先に観たラブコメでシドニー・ウィーニーのおぱーに目を奪われた私は”男性のまなざし”に洗脳されているのか?
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カメラが捉える女性の胸、舐め回すように視線が動き腰、脚。うん、いつものショット。
いつもの…?!!😳それをいつもの割り切れる自分は大丈夫か?やっぱり洗脳されてるぞ!
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ヒッチコック、スコセッシ、タランティーノ、2020年代最新作までの大量の映画のクリップを例を挙げ、時には図解もあり、わかりやすい。
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見ているのは男、見られているのは女(の体)。その関係は主体→客体であり、見られる側は商品。個性とかどうでもよく、性の対象として搾取される。そんな一方的な関係が、差別を生み、性的虐待を大量発生させたという。
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画面構成、編集、効果音、照明どれをとっても男が主、女が従の作り。女性が主人公であっても、本当の女性視点のものが少ないし、これが”普通”と刷り込まれてきたんだなぁ。
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美しく描かれる女性の裸体。芸術と言えるかもしれないが、それにしても大安売りだ。
「嫌よ嫌よも好きのうち」とか、ロリータ系とか、そのシーンだけ切り取ってみると、ロマンティックが吹き飛びました。いや、マジで。
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観ている間、紹介された映画やそれを良しとする自分も批判されたような、居心地の悪さみたいなものも感じてしまうけれど、個々の作品が悪いのではない。その積み重ねの洗脳が危険なんだと皆が知ればいい。
そしてどんどん異なる視点の映画増えていけばいいのだよね。
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#metoo 運動で実に多くの被害の実態が顕在化。ポリコレも進み、変わりつつあるハリウッド。すでに一昔前とは違う作品も出てきている。
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監督はアメリカのインディペンデント系映画作家ニナ・メンケス。「私ならこのシーンをどう撮るか」想像して創り出すことは映画に携わる彼女たちの仕事。個性豊かな新しい映像が観たい、初めてそう思った。