このワードを使うのを躊躇してしまうテーマだけど、無類に「面白かった」。
主要キャスト3人それぞれの視点から3章に分けて語られる物語。同じ登場人物、同じ場所、同じ出来事。なのに、ちょっとした台詞の違い、話す順番の違い、表情の違いによって、まったく異なる見え方をしてくる…。まさに、リドリー・スコット版『羅生門』。
長い上映時間だけど、編集の切れ味が鋭く、ものすごくテンポよく見られる。
そして、クライマックスの決闘は、さすが『グラディエーター』を撮った監督だけあって、迫力と生々しさが半端ない。決着したあと、並の物語なら押し寄せるような爽快感はなく、虚しいやるせなさが残るのみ。
物語的に何かが解決するわけではないので、ものすごく重ーい荷物を預けられたような気分になるが、いま見る価値のある、ズシンと来る映画です。
いつも思うけど、80歳を優に越してコンスタントに傑作を撮り続けるリドリー・スコットやクリント・イーストウッドは魔物のようです。何なんだ、いったい。