きゅうげん

LAMB/ラムのきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

「とりかえ子」は欧州にみられる人間と妖精との嬰児の交換の伝説で、今日においては主に発達不全や障害などを説明するものとして理解されています。
日本の鬼子とか神隠しとかの民間伝承も、それに類するものでしょう。江戸時代に曲亭馬琴や平田篤胤が注目した、天狗に連れ去られた少年・寅吉くんの『仙境異聞』なんかが有名ですね。

昨今の“北欧ホラー・ブーム”のなかで耳目を集めた本作。
風光明媚な風景の美しさや動物たちの不穏な演技、家族&牧場だけのシンプルな設定に愛娘アダちゃんの獣人感など、雰囲気づくりはなかなかナイスです。
「とりかえ子を横取りしたら取り返された」というストーリーは、きれい過ぎるほどの三幕構成。
サブキャラによるサブプロット(兄嫁に言い寄る義弟)とか、スポーツや音楽などの人間文化に当惑するアダちゃんのドラマは、もっと掘り甲斐があったように思います。
というか、こんな出オチ物語は終わらせようが無いんだけど、しかしラストのナオミ・ラパスの画は逃げたというか投げたというか……。

ところで獣人パパ、もっと異形っぽさが欲しかったですねぇ〜。とりかえ子の妖精譚は、つまるところキリスト教vs民間信仰(→悪魔)なので……。
アイスランドの凍てつく静謐さも良いんですが、火山噴火的なサプライズも欲しかったな。