浅野公喜

クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲の浅野公喜のレビュー・感想・評価

4.0
クレヨンしんちゃんの中でも特に傑作と言われる劇場版第9作。子供の頃テレビで断片的に観たのを今更ちゃんとフルで鑑賞しました。今回のテーマは昭和ノスタルジーで、20世紀博というテーマパークに大人達が夢中になり普段はメインである子供達が逆に振り回されてしまう状態がユニーク。

ひろしとみさえが乗っ取られるというフェイバリットの「ヘンダーランドの大冒険」を思わせるホラー的状況を逆手に取り、スナックでくだを巻きデパートに泊まり車(バス)を運転するという子供の願望を実現しているのが面白く、バスの運転では5人がハンドル・アクセル・ブレーキ・クラッチ・ギアと見事に役割分担出来ているのが上手い作り。制限速度を守る融通が利かない風間君をはじめそれぞれの性格に合った行動を描きつつ、まさお君が追っ手を蹴散らして自信を得る様はさり気無い成功体験が大事というメッセージも見えてきます。

日常の有難味に気付かせる有名なひろしの回想等は普段嫌がられているひろしの足の臭さがきっかけというのも-が+になる文字通り「笑って泣ける」カタルシス伴うもので、悪役ポジションのケン(とチャコ)が猶予を与え、行動しろと言う所では昭和を愛しつつも彼らも本作のメッセージでもありそうな「未来を見据え、前向きになる事」をまだ諦めておらずしんのすけ達に望みを託している本心も伺え、それが東京タワーを駆けあがる終盤をより盛り上げている気も。

カーチェイスに関してはひろしが外れた車のドアに乗っかり滑り車と車の間を滑る様はテーブルに乗ったまま引きずられる「リーサル・ウェポン4」、車の上に乗るも障害物が当たり落ちるのは「悪魔の追跡」、多重事故は「ブルース・ブラザース」を連想させ、バスの上からおしっこ時の西部劇風アングル(「Aフレーム」と言うらしいです)が無駄にかっこいいのも印象的な所。

老若男女が楽しめる作品として、確かに傑作と言える内容でした。余談ながらみさえのでか尻ですが、昨今の一部海外セレブの馬鹿でかい尻に慣れてるとむしろ丁度良く感じます(笑)。
浅野公喜

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