May

プリテンダーズのMayのネタバレレビュー・内容・結末

プリテンダーズ(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

前にならえ!という誰しもが持っているだろう風景が連続して作品は始まる。つまり、周りに合わせろ、周りに迷惑をかけるな、個性なんかいいから的なメッセージの含みを序盤から表現して、そこに前にならえをしない花梨が出てくる。集団に対する異分子的な存在。こういった輪に入れない人間は他の作品でも扱われている類の存在だけれど、花梨はそんな圧倒的な個性というより実に軽薄な存在に感じたのがおもしろいところだった。まさにずっと「フリをしている」からだ。
この軽薄性は個性を大事にしろ的な論を振りかざす割にゴッホという明らかな他者の名前を頻りに言ったり、本名は明かさずにしかも匿名を使って表現をしたり、再生回数やいいね数などの数値をやたら気にしているところなど、やることなすことがありふれている。冒頭の前をならえをずっとしない花梨が一番輝いてみえて、それ以降はかなりつまらない人間になってしまった(作中で風子に指摘される、そしておそらく風子はあの時の花梨を見て感動したんだと思う)。
圧倒的な個人が結果的に周囲のムードを変えていくことには賛同するが、この個人があまりにもありきたりで物足りないままで物語が終わってしまったように感じて、締め方や展開が不完全燃焼だった。何かもっと花梨の違った変化を期待してしまった。

ラストの幼稚園でのシーンでの、花梨が母親の代わりに妹を抱いてゾンビを倒すところはよかったと思う。
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