NaotoFunkallero

オアシス:ネブワース1996のNaotoFunkalleroのネタバレレビュー・内容・結末

オアシス:ネブワース1996(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

1996年当時の熱狂を追体験できる圧倒的没入感。

監督は異なるが、oasisのドキュメンタリー映画として前作となる『Supersonic』はバンド結成から1996年のネブワース公演に至るまでの苦悩と栄光を描いていた。本作は時間軸的にその続きとなる、ネブワース公演直前のファンの様子から、白熱したライブの模様を25年の時を経てドキュメンタリー映画化したものだ。

この映画の良かったところは、当時実際にライブを観たファンの証言を主軸に置き、再現映像や関係者たちの話を交えつつ、ライブ演奏もしっかりと楽しめる構成になっている点だ。

当然ながらインターネットも普及していない時代。序盤はファン達が電話と対面販売のみでどうにかチケットを入手しようと模索する様子や、最前列で観るために前日深夜から会場入りして、ライブの開始を今か今かと待つ様子が詳細に描かれていた。

そんな当時のファン達の様子を観ていると、映画館にいるはずの我々も、次第に、「これから本当にこのライブに参加するのではないか?」という気持ちになってくる。

前座を務めたアーティスト達の豪華さもさることながら、オアシスが登場した瞬間のボルテージの高まりはこの上なかった。

昨今のライブではスマートフォン片手に、少しでもその瞬間を抑えようと、画面越しにライブを観てしまっている人もいるが、当然ながらそんな光景はこの映画の中にはない。

当時の参加者達が、この歴史的な瞬間を、自分の瞳を通して、心の中のフィルムに懸命に焼き付けようとしている様子がひしひしと伝わってきた。


テクノロジーは日々発展し、高画質でHDRな映像、イマーシブサラウンドの音響で、より没入感の溢れる映像作品をつくれるようになっている。

だが、この作品の没入感は、そうしたテクノロジーによって実現されたものではない。

思うに、この映画の主役は実はオアシスではなく、オアシスファンなのだろう。当時のライブの主役は紛れもなくオアシスだが、この映画の主役は、ネブワースを訪れたオアシスファンだ。十人十色のファンの様子が描かれていることにより、自分がその当時そこにいたら、どんな行動をとるだろうか?と思わず想像させられてしまう構成になっている。

そんな前段があるからこそ、ライブ中の演奏がより一層心に響いてくる。憧れの舞台、憧れのジョン・スクワイアとの共演。労働者階級からのし上がって、世界中の人々を熱狂させる彼らはまさに、“Rock ‘n’ Roll Star”、そのものだ。
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